支援は一定期間やってみて、ダメなら変えよ
(事例6)
父「子どもが引きこもってから5年、色んな所に相談に行きました」
スタッフ「具体的な支援を受けたことはありますか?」
父「どれがいいのか決められなくて、何もできていません」
(事例7)
母「私は10年間親の会に通っていて、指導されたことはちゃんと実践しています」
スタッフ「それで、お子さんに変化はありましたか?」
母「いえ、ずっと引きこもったままです」
例えばどこか体の調子が悪い時に、まず内科に行き、特に病気が見つからなければ外科など別の科や別の病院に行き……と行先を変えるのは、ごく当たり前のことです。病気が見つかって治療を始めても、ずっと体調が改善しなければ、別の病院へ行くことを考えると思います。
引きこもり支援も、同じです。吟味した所にとりあえず行って、しばらく通ってみて、良くならなければ別の所へ、という発想で構いません。逆に言えば、そういう心持ちでなければ合う支援に辿り着けないほど、引きこもりも支援も多様なのです。合わない支援を続けると、改善が遅くなったり変わらなかったりするどころか、時には悪化もしてしまいます。
引きこもり状態が半年から1年続いたら何かしらの対応をするべきだと、この章の最初にお伝えしました。遅くとも引きこもり1年の時点で何か本人への対応を始められるのがベストです。ちなみに親が相談や親の会に行くことなどは、本人にアプローチしていないので、ここで言う「対応」には含まれません。情報はそれ以前に収集しておき、目的や方針を決めて、実際に本人に働きかけを行うものが「対応」と呼べるものです。
そして、その対応には、ダメなら次に行く「期限」が必要です。色々な考え方があるとは思いますが、私たちが提案する期限は2年です。2年もあれば、引きこもりから一人暮らしや寮での暮らしに移る、バイトを始めて自立に至るなど、明らかな結果が出ると経験的に分かっているからです。逆に2年やってみて状況に変化がなければ、残念ながら私たちの支援では無理だと判断するべきでしょう。
ただしあまり支援先をコロコロ変えることは、病院を転々とするのと同じで、避けるべきです。きちんと吟味した上で選択し、一旦はその支援を信じ、きちんと任せなければ結果にはつながりません。逆に、「やり直しがきかない」と思い込んで、一つの支援に固執し続けるのも避けるべきです。
以上のことを頭に入れて、事例をもう一度見てください。事例6は何も試していないので情報が全く溜まっておらず、事例7は10年も合わないと思われる支援を続けて来た、「もったいない時間の使い方をしてきたケース」だとお分かりになると思います。