日本の全世帯の中でも単独世帯の割合は年々増加し、2016年には約27%に及んでいる(2018年・厚生労働省)。家族と離れて暮らしていたり死別していたりと状況は様々だが、他人との親しい交流がないまま単独で生活をしていることで、健康状態が急激に悪化しても助けを得られず、死後発見されるまで長い時間が空いてしまう。
全国で約3万人にものぼる孤独死の現状を追うフリーライター・菅野久美子氏の著書『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)より、一部を引用する。
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親亡き後のひきこもりが抱える不安
親も老いて、いつかは死ぬ。だからといって「そのとき」に、外部に助けを求めることは難しいだろう。親が亡くなった後、金銭面で苦しくなり最悪、餓死というケースも考えられるが、ひきこもりの支援を行っている関係者によると、親の遺産として500万円以上の現金を所有しながら、セルフネグレクトとなり若くして孤独死したひきこもりの人の例もあった。
私がひきこもりの時は、決して現状でいいと思っているわけではなかった。自分は、このままでいいのか、これから自分はどうなってしまうのか、未来を憂えて焦りばかり募る。なんでこんなことになってしまったのかという、怒りや悲しみ、どうしようもない焦燥感に襲われる。
社会に置いていかれていると感じる日々は、生きながらにして死んでいるような地獄である。そんな孤立した生活は、益々セルフネグレクトを深めて、不摂生な生活へ向かい、知らず知らずのうちに自らを追い込んでいく。
いつか、叔母からの仕送りが止まるかもしれない、そのとき自分はどうなってしまうのだろう──。そんな不安が、高橋の頭の片隅にあったのではないだろうか。
内閣府は2019年4月に初めて、自宅に半年以上閉じこもっている「広義のひきこもり」の40~64歳が、全国で推計61万3000人いるとの調査結果を出した。
引きこもり解決の糸口とは
今後政府が抜本的な対策を打たない限り、8050問題に代表されるように、長期化する中高年のひきこもりが親亡き後に、孤独死や餓死といった最期を迎えるケースも、増えるだろう。
ひきこもりの当事者や家族をはじめ、生きづらさを抱えている人たちが安心して暮らしていける社会を目指して活動する、一般社団法人「OSD(親が死んだらどうしよう)よりそいネットワーク」(東京都豊島区)の代表理事、馬場佳子さんも、ひきこもる人にとって家族の存在がカギになると訴える。
「ご家族にはまず、本人の今の状態を心の底から受け入れていただきたい。親御さんからの相談で一番多いのは『本人に働いてほしい』ということですが、その前にはいろいろなハードルがあります。まずは、本人が置かれている状態まで下りてきていただきたい。人と会うこと自体が怖い人も多いため、本人がまずどういう状態か、心の底から理解してあげることが大切です。
共感してくれたり、信頼してくれたりする人がいると、本人から少しずつ歩み寄っていけます。本人は、『安全なのは自分の周りだけで外の世界は怖い、危険だ』と感じていることも多いのです。そのため、近くにいる親御さんが安全な存在になることが大きな一歩になります」