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遺族の兄が語る弟の生活実態――51歳の男性を孤独死に追い込んだもの

『家族遺棄社会』 #2

2020/08/12
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現役世代の孤独死が4割

 日本少額短期保険協会が発表した第4回孤独死現状レポートによると、孤独死の平均年齢は61歳で、高齢者に満たない年齢での孤独死の割合は5割を超え、60歳未満の現役世代は男女ともに、およそ4割を占めるという。これだけ若くして孤独死してしまう人が多いということだ。

写真はイメージ ©iStock.com

 もちろん、孤独死の内訳がひきこもりだけとは限らない。しかし、その中にはかなりの数のひきこもりが含まれており、年々増えているとの実感がある。「命」に関わることであることから、この現状に危機感を感じずにはいられない。政府が重い腰を上げたことで、ようやく中高年のひきこもりの実態が昨年明らかになった。それならば、その最終地点である孤独死の実態把握とその対策も、急いで取り組むべき喫緊の課題といえるだろう。

低体温症で亡くなった50代ひきこもり男性

 紺野功(60歳)は、そんなひきこもりの弟を孤独死で亡くした遺族の一人だ。

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「弟は、孤独そのものだったと思います。親族だからこそ、あいつは孤独だったという印象を持っていますね。あいつの人生をずっと見てきたから。友達もいないし、仕事もほとんどなくなって、ここ数年は家の中にひきこもっている状態でした」

 そう言って、紺野はうなだれた。

 まだまだ寒さが骨身に染みる2月某日──都内の1LDKのアパートの一室で、システムエンジニアである紺野の弟(51歳)は孤独死していた。

 警察によると、死因は低体温症で死後1週間が経過。警察は「数日間は意識のない状態で生存していた可能性がある」と紺野に告げた。

「低体温症って、雪山に行ったときになるイメージがあったんですけど、部屋の中でも室温や体温が影響して起こることがあるみたいなんです。確かに、弟は部屋に暖房設備も付けていなくて、アルコールばかりでろくに食べてもいなかった。それで衰弱したことが突然死に結びついたみたいです」

 弟の部屋に足を踏み入れると、どこもかしこもパソコン関連のモノで溢れていた。部屋の奥には、天井まで幾重にも段ボールが積み重なり、今にも崩れ落ちんばかりとなっている。パソコンが38台、モニターが20台以上、ホコリをかぶっていた。

 デスクの下には、4リットルのペットボトルの焼酎が二本も置かれていた。弟は仕事が減るにつれてここ2年ほど、お酒を片時も手放さなくなった。大量の新聞紙は片付ける気力すら失ったのか、読んだ形跡もなく、無造作に山となって積み重なっている。