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孤独死者の8割はセルフネグレクト

 孤独死する人の8割に見られるのが、こうしたセルフネグレクトである。部屋がゴミ屋敷化したり、病気にかかったりするなど、どんなに危機的な状況に陥って命を脅かされることがあっても、頑なに介入や治療を拒否する。また偏った食生活や過度な飲酒などによる不摂生で、自らを緩やかな自殺に追い込んでしまう。紺野の弟の場合も、医療の拒否が死期を早めてしまった可能性がある。

 しかし、セルフネグレクトから救い出すことは難しい。当の本人が拒否していることに対して、無理やり介入することはできないからだ。

写真はイメージ ©iStock.com

「弟はひきこもりからセルフネグレクト、そして孤独死と、まさにこの経過をたどったんです。あいつの人生を振り返ったとき、対人関係で良い思いをしたことがないような気がする。

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 お金をもらうための仕事はしてたけど、あいつにとって人生の楽しみってなんだったんだろう、と考えてしまうんです。ずっと心の中は孤独で、ひきこもりになって、自分自身の人生を放棄するみたいにお酒に溺れていったんじゃないかな」

行政のセーフティーネットにかかりづらい現役世代

 友人もいないため、葬儀は母親と紺野の2人のみ立ち会う家族葬となった。幸いにも冬場だったため、遺体の腐敗はなく、棺に納められた弟の顔を見ることができた。

 しかし母親は、弟を一目見ると「これは別人だ」とショックを受けた。生前の面影とは似ても似つかないほど、変貌していたのだ。

「弟の顔は、まだ51歳なのに70代に見えたんです。私も最初に遺体を見た時、こんなに白髪があったの? と驚きました。最後に会ったお正月の時とは比べ物にならないくらい、おじいさんに見えました。衝撃を受けているおふくろを横で見ていて、本当にかわいそうだった。

 こんな亡くなり方をさせてしまったことに対して、兄としてもっとやれることがあったんじゃないか、と思ったんです。おふくろは、親より先に子供が亡くなるのが一番の親不孝だ、と嘆いていました。おふくろのことを思うと、とにかく不憫でした」

 先にも述べたが、孤独死は高齢者の問題だと思われがちだが、実は働き盛りの現役世代のほうがセーフティーネットにかかりづらいということが、筆者の長年の取材からも明らかになっている。