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路面はボロボロ、対向車が来たら終わり…総延長348キロの「酷すぎる国道」を全線走破してみた

“酷道439号”で見た日本のリアル

2020/09/19

genre : ライフ, , 娯楽, 社会

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“ポツンと一軒家”を訪問してみると……

 翌朝、私は早速コースアウトして、山の中腹にある集落を訪れた。たまたま表に出ていたお婆さんがいたので話を聞いてみたところ、親切にもこの集落の歴史を教えてくれた。

 もともとここには何百年も前から集落があり、お婆さんが嫁いできた頃にも6軒のお宅があったそうだ。当時は各々の作物や家畜などを融通し合って生活していたが、それでも手に入らない物を買いたい場合には、街に出る必要があった。そうしたときは何時間もかけて街まで歩いていたが、それでは不便だろうと、車が通れる道路を行政が造ってくれた。

山の中にひっそりと佇んでいた集落

 しかし、皮肉にも道路が出来ると、みんなすぐに街へ引っ越してしまった。道路が出来てから20年が経ち、集落に残ったのは2軒のみ。当然、物々交換での生活は成り立たなくなり、買い物の度に街に出なければならなくなった。とはいえ、タクシーを使うと往復で1万円ほどかかるという――。

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 道路を造ると人が流出し、それがさらなる過疎を生む。そんな現象は、日本中あちこちの集落で発生しているのだろう。

 さらに幾つかの集落を訪れているうちに、2日目もすっかり日が暮れてしまった。

獣道を登って“廃村間近”の集落へ

 最終日の朝、私は高知県いの町にいた。峠からは山の上に民家が見えたが、どうしてもそこに至る道が見当たらない。そこで地元の方にルートを尋ねてみると、車道はなく、獣道しかないらしいことがわかった。昔は集落があったが、今は1軒しか残っていないそうだ。

 そこで私は車を降りて、教えてもらった獣道を歩いてみた。急な上り坂が延々と続き、炎天下で体力を奪われる。汗だくになりながらも小一時間で集落に到達したが、住人が在宅しているとは限らないし、在宅していたとしても話が聞けるかどうかはわからない。

集落へ向かう唯一の道
登っていくと、廃屋が見えてきた

 ドキドキしながら歩いていると、ちょうど畑仕事をしているお婆さんの姿が見えた。突然の来訪をお詫びしつつ、事情を説明し、趣味で岐阜から来たことを伝えると、木陰に腰かけてゆっくりとお話しすることができた。