1ページ目から読む
2/3ページ目

 最初に動いたのは8月24日の政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会。会議は非公開だが、その後の会見で尾身茂分科会長が「指定感染症としての運用が適切かどうかを議論するというのがコンセンサス」と表明した。

 通常なら、提出資料を元に合意内容を説明するが、この件について尾身氏は「紙はありませんが」と述べ、それでも分科会の意思決定プロセスを経たことを強調した。

 だが、後に明らかになったが、安倍首相が辞任を決意したのが、奇しくもこの24日だったのだ。

ADVERTISEMENT

「やってる感」の演出だったのか?

 4日後の28日、安倍首相の辞任発表前に明らかにされた本部決定は、「宿泊療養の徹底」に加えて季節性インフルエンザの流行に備えた検査の拡充や、ワクチンの確保の見通しも盛り込み、秋以降の課題への対処法が“てんこ盛り”だった。

安倍前首相 ©共同通信社

 つまりは投げ出し批判を和らげようと、手近にあった材料で「やってる感」を演出する――そういう政権都合で本部決定がなされたのではなかったか。

 疑念を裏付けるように9月10日、この問題を話し合うために開かれた分科会の作業部会では、慎重意見が強くあったことが紹介され、事務局の厚生労働省も実質的に「白紙」の状態であることが露呈している。

安倍政権はなぜこんなに遅かったのか

 これまで、「感染拡大防止」と「経済再開」の両立という難しい仕事の実務をより厄介なものにしていたのが今年3月に改正された新型インフルエンザ対策特別措置法の建てつけの悪さだ。

 首相が「緊急事態宣言」を出せば、知事は、外出自粛や休業などの指示や要請ができるが、強制する権限はない。陽性者に対して入院や宿泊療養施設への入所を勧告する際も、「お願い」ベースの手段しか取れない。

 4月の連休前から特措法改正の必要性について指摘されていても政府は安倍退陣まで国会を開かず、後継の菅氏も改正の必要性を否定こそしないものの「現在の法律の中で一生懸命に取り組んでいる」というのみだ。