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「誰でも良いから襲っちゃう」強盗殺人の共犯者をネットで募って……“闇サイト”管理人の言い分とは

犯人は〈貧乏すぎて強盗もしたいくらいです〉

2020/09/19

genre : ニュース, 社会

発覚した日本最初のネット依頼殺人は、夫婦間での依頼

 これまでの、インターネットを介して殺人事件が起きる場合は、依頼主が明確で、対象者があらかじめ指定されていた。また、殺害の報酬も提示されていた。わかっている範囲では、最高で3000万円から最低で30万と幅が広い。親族間や恋人間のトラブルが発端になることが目立つ。無関係のOLが被害にあったという意味でも、衝撃的な通り魔殺人だった。

 発覚したもので日本最初のネット依頼殺人は2003年10月に起きた。「裏のハローワーク」を通じて、夫(34)が妻(34)を殺害しようとした。事業に失敗したことによる保険金目当てだ。かろうじて、妻が逃れることができ、未遂となる。その後、3000万円の報酬を約束した夫は、実行犯の新聞配達員の男I(35)とともに逮捕された。

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 報道で「闇サイト」という言葉が使われたきっかけは、「闇の職業安定所」を通じて事件が発生したためだ。最初に報道されたものは2004年6月10日に発覚した事件だ。愛知県美浜町の会社員U(39)は、「闇の職業安定所」に「高額報酬の仕事あります」などと書き込んだ。応募してきた男らを、「実行役」や「レンタカーを借りる役」、「現金の引き出し役」などに振り分けた。Uは下見だけ。応募してきた男らは面識がなかった。

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「闇の職業安定所」の管理人が語った経緯

「闇の職業安定所」を開設した管理人は、犯罪目的で開設したわけではないという。管理人にはメール取材で何度か話を聞いている。当時、開設目的についてこう述べていた。

「当初の目的は、短期アルバイトの求人サイトの予定でした。ただ、そういったシステムを作るには費用もかかりますし、時間もかかります。それを解決する方法として、掲示板という手法を取りました。誰でも簡単に求人が出せ、求職もできる。そのようなサイトを目指しているのに変わりはありません。ただ、犯罪に関わる書込みや売買の書込みは禁止です」

 今で言えば、マッチングサイトを意識していた。しかし、結果として、犯罪者の募集が行われている現実があった。それを指摘すると、違法な書込みは削除や制限を掛け、禁止ワードを50以上設定していることを弁明した上で、こうメールで返事があった。

「犯罪が起きる度に対処をしております。そして、サイトには最初、『警察に保存しているログを提出する』と明記していました。具体的な警察署(県警名)の名前を出して警告したこともあります。ただし、後日警察からクレームがきて上記はなくなりました。犯罪が起きたという事実は重く受け止め、対処をしているところです。それでも起きてしまうのが実情です。更に、サイトの入り口を別にして、必ず注意文に目を通してもらう。『18歳未満の閲覧禁止』というアダルトサイトの入り口をイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。このようにする予定です」

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 名古屋闇サイト殺人事件が起きてから、再び「闇の職業安定所」管理人に筆者がメールを送ってみると、アカウントが削除されており、メールでの取材もできなくなった。何か、考えることがあったのかもしれない。