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作ってみたら、開設するだけで桁違いのアクセス数

 インターネットの掲示板を介した犯罪が起きると、メディアでは「闇サイト」と報じられる。被害者の遺族は「闇サイトをなくしたい」とも訴えた。磯谷さんの死を無駄にしないために、3人の極刑を求めて署名活動を始めた。2008年3月、遺族は当時の法相に規制を求める手紙まで書いた。しかし、事件が起きる度に、新たな「闇サイト」が開設されるのが現実だ。話題になればなるほど、同じような「闇サイト」が増えていく。

 事件後にできた類似サイトの管理人は対面での取材は拒絶したものの、「最初、『闇の職安』は怖いなって思いました。犯罪者を集めるサイトと。テレビでやっていましたが、僕も最初はそう思いました。でも話題でしたので作ってみました。『表求人』、『裏求人』などのコンテンツは類似のサイトをマネしました。自分が作った他のサイトとはアクセスの桁が違いました。開設するだけでアクセス数が多いのです」とメールで返信があった。

©️iStock.com

 現在でも、類似のサイトは跋扈している。ただ、どのサイトが、犯罪に使われる意味での「闇サイト」化するのかは、ユーザー次第でもある。

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主犯格が死亡した謎の監禁殺人

 2018年6月、静岡県の山中で、浜松市在住の看護師の女性(29)の遺体が発見された。静岡県警は住所不定のM(28)と名古屋市のS(42)を監禁と殺人の疑いで逮捕した。サイバーパトロールをしていた警視庁の捜査員が、ネット上の違法な内容の書き込みがあるとして、Mから事情を聴く中で、静岡県の事件を話し始めたことで発覚した。また、Sは「ばれるのも時間の問題だ」と思ったことから、名古屋市内の中川署に1人で出頭した。2人は、直接殺人には関わっていないために、殺人罪では不起訴となっている。

(写真はイメージ) ©️iStock.com

 実際に殺害を行ったのは、新潟県出身のA(39)だ。ローカルコミュニティサイト「爆サイ」に、Aが「サクッと稼ぎましょう」とのタイトルで「2~3人のチームで動きます。全国行くんで身軽な人なら年齢性別不問です。即合流可能です。とりあえずメールしてください」などと投稿したと見られている。3人は事件当日初めて顔を合わせた。Aは新潟市内のビジネスホテルにて死亡していた状態で従業員に見つかった。近くには遺書があり、自殺と思われている。主犯格の死亡で、事件の真相がわかっていない。

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哲也, 渋井

筑摩書房

2019年9月6日 発売