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「若頭の刺傷からガタガタし始めた」名門・山健組が神戸山口組から独立宣言《勾留中の組長が指令》

2020/09/19

genre : ニュース, 社会

〈今般私儀 諸般の事情に鑑み神戸山口組を脱退いたす事を決意致しました〉

 9月上旬、「御挨拶」とのタイトルの達筆な毛筆で書かれた一枚の書状が、暴力団関係者の間で出回った。文末には〈令和二年八月 五代目山健組々長 中田浩司〉とある。

 山健組といえば、6代目山口組から5年前に分裂した神戸山口組の中核組織。5代目時代には、「山健組にあらずんば、山口組にあらず」とまで評された業界の“ブランド”的存在だ。その組長である中田自身が、神戸山口組を離脱し、独立することを対外的に明確に宣言したのだ。

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 神戸山口組は5年前の結成当初こそ加入組織が相次ぎ、勢いを見せていたが、昨年から離脱を表明する組織が続いていた。今回の山健組の“独立宣言”は、山口組の分裂抗争の新たな不安定要素となる。新たな抗争の火種になりうる山口組内の動きに、警察当局は監視の目を強めている。(全2回の1回目/後編に続く)

山健組が神戸山口組からの離脱することを伝えたとされる書面

神戸残留組には「絶縁」「破門」を断行

 山健組内では7月ごろから、神戸山口組から離脱を目指すグループと、残留派のグループ間で数回にわたって会合が持たれていた。しかし、山健組組長の中田が殺人未遂容疑で逮捕、起訴されて勾留中だったため本人の意向が分からず、断続的に開かれていた会合では結論が出なかった。このため、噂ばかりが飛び交う事態となっていた。

暴力団関係者に出回った山健組の中田組長(中央右)の写真

 結果がはっきりしたのは、8月に入ってから。冒頭で紹介した書状によって、中田の意志が示された格好だ。中田は面会を許された弁護士を通じて意思疎通したものとみられる。

 中田の書状には、次のような一文がある。

〈今後は五代目山健組と致しまして侠道に邁進致す覚悟で御座居ますれば(中略)組員達も大半は従前通り山健組に生き侠道に精進致しますので……〉

 つまり、山健組が抱える多くの傘下組織の直系組長やその配下の組員たちも行動を共にするとも述べているのだ。実際、組長の中田をはじめほぼ半分の傘下組織の直参組長が離脱するとされる。

 では、神戸側に残留する山健組系の組織はどうなるのか。実は、中田は8月下旬に残留を主張していた傘下グループの直系組長である直参約20人に「絶縁」「破門」などの処分を通知していた。この処分に暴力団業界に波紋が広がっているという。山健組の事情に詳しい指定暴力団幹部が指摘する。

「山健のところで揉めていたとは聞いていたが、残った幹部を絶縁、破門と一斉に処分を出したのは、かなり強硬策に出たなと思った。これから一本(独立して)でやっていくという決意表明だろう」