2年前の「有力組織の離脱」が痛手だった
最高幹部も去ることになった神戸山口組の現状について、前出の指定暴力団幹部は次のように指摘する。
「ここに至るまでの間では、2年前の山健組からの兼一(かねいち)会の離脱が大きかったのではないか」
兼一会は、神戸山口組の中核・山健組内でナンバー3の地位にあった組織。ところが、同じ神戸山口組の太田興業との間で大阪市内でのシノギ(資金獲得活動)をめぐりトラブルになっていた。太田興業を率いる太田守正は元々、山健組の最高幹部を務め、分裂前の6代目山口組でも直参として活動した業界の重鎮だった。
双方の間で話し合いが持たれたが、こうした力関係もあって決裂。神戸山口組は、兼一会会長の植野雄仁を「絶縁」処分とした。兼一会はその後、思い切った動きを見せる。対立していたはずの6代目山口組に加入するのだ。現在では、6代目山口組の直参として活動している。
前出の指定暴力団幹部は「兼一会はカネが潤沢だし、若い衆もたくさんいる。兼一会の離脱あたりから、神戸側の迷走ぶりが加速した」と指摘する。
兼一会とトラブルとなった太田興業も2019年12月、引退を宣言。神戸山口組は、2つの有力組織を失うことになった。組織犯罪を担当していた当時の警察庁幹部が振り返る。
「兼一会が神戸山口組から離脱しただけでなく、その後、山口組側に加入したことで、神戸側は痛手が大きかった。離脱したというだけならまだしも、対立している相手側を利することになってしまった」
8月にも神戸側から6代目側に移籍した組織が
この8月にも神戸側から6代目側に移った組織がある。
8月15日、山口県岩国市で、神戸山口組系木村会幹部の前原順一が銃撃されて重傷を負った事件があった。逮捕されたのは、6代目山口組系竹中組幹部だった。
竹中組といえば昨年11月、尼崎市内で神戸山口組系幹部の古川恵一を、かつて米軍で公式採用されていたM16という自動小銃で数十発を乱射して殺害した朝比奈久徳が所属していたことでも知られる。この事件は多くの買い物客が行きかう尼崎の商店街で発生したため、巻き添えを危惧する一般市民から非難の声が聞かれた。
ところが、8月15日に6代目山口組系竹中組幹部に銃撃された神戸山口組系木村会が、事件から間を置かず8月下旬に神戸山口組を離脱しただけでなく、背景事情は不明だが、山口組直参の傘下組織への加入が認められ、すでに移籍しているのだ。