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度重なる離脱で「暴対法の規制外」に

 度重なる山口組系団体の離脱に、警察当局が頭を悩ませているのが、「指定暴力団」の指定が後手に回ってしまうことだ。

 指定暴力団として指定されると、縄張り内の飲食店などからのみかじめ料と呼ばれる用心棒代の徴収の中止命令や、対立抗争事件発生時の事務所の使用制限など暴力団対策法上の規制の対象となる。しかし、指定するには、

(1)暴力団の威力を用いて資金を獲得している
(2)犯罪歴がある組員が一定以上の比率を占めている
(3)組長をトップとして傘下組織がピラミッド型の組織形態となっている

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 といった3要件が必要となり、その指定作業は煩雑なものだ。

 これまでも、6代目山口組から神戸山口組が離脱した際には、警察当局が神戸側について暴対法に基づく指定暴力団とするべく急ピッチで指定作業を進めた。2017年4月には、山健組副組長だった織田絆誠が大量の組員を引き連れて離脱し、任侠団体山口組(現・絆会)を設立した際にも、同様にスピード指定にこぎつけ、同法上の規制の対象とした経緯がある。

2019年5月、神戸山口組の定例の会合に集まる組関係者ら ©️共同通信社

 今回、山健組が神戸山口組を離脱して独立した組織として活動することになると、改めて「指定暴力団」としての規制が必要となる。神戸山口組を今年7月に離脱した池田組についても、絆会と活動を共にする動きを見せているが合流したわけではなく、独立した組織である以上、指定作業の対象にすることが必要だ。

 組織犯罪対策を担ってきた警察庁の元幹部がこれまでの経緯を語る。

「指定暴力団傘下の一部組織が離脱すれば、暴対法上の規制対象外となってしまう。そのため、離脱組織についても『指定暴力団』として規制の対象とすべきという議論は前からあったが、これには法改正が必要になってくる。

 5年前の6代目山口組分裂時にもこうした議論はあったが、まずは目先の神戸山口組の指定作業を早く進めて活動を規制しろ、という判断が下されて法改正の議論にまでは至らなかった。しかし、このように分裂が続くと、どこかで結論を出さなければならないだろう」

(写真はイメージ) ©️iStock.com

 暴対法が施行されたのは1992年。当時バブル経済は終息していたとはいえ、好景気の余韻は残っており暴力団業界も表経済の恩恵を受けていた。多くの暴力団組織で分裂といった事態は想定外だった。

 しかし、バブル崩壊後の景気低迷と2011年10月までに全国で整備された暴力団排除条例などで暴力団業界は経済活動がひっ迫していることで新たな事態を迎えた。

 相次ぐ分裂、離脱で不備が明らかになった暴対法をどのように変えていくか。警察当局にも新たな課題が山積している。(敬称略)