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ヤクザを使って沖縄や“売春島”に

 女が逃げたら、一介のスカウトでは保証ができない。だからヤクザが介在するのかと聞くと、彼は得意げに解説した。

「いや、ヤクザは店との橋渡しをするだけ。あくまで女の保証人は連れてきた俺らか、俺らとヤクザの間に入るブローカーになる。

置屋のあった島の路地裏(著者提供)

 だからブローカーも慎重だったよね。女のコの面接をして、そこで覚悟を聞いて。もちろん同時に説得もする。それで大丈夫だと確信を得て初めて、ヤクザに引き合わせる。そうして間に何人も入るから、俺らスカウトも極力リスクを負わなくて済む。すると当然、実入りも少なくなる。折半の折半で、手にできるのは800万のバンスのうちの4分の1。たった200万をホストと分けた。

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 多重債務者など追手から逃げたい女は別として、ホストで売り掛けを作ったような、有って無きカネでさほど覚悟もないまま売り飛ばされるヤツらは、逃げる可能性がある。だからヤクザを使って沖縄とか売春島とか、離島で脱出手段の乏しい場所に沈めるしかないんだよね。

 ブローカーは『1000万は楽に稼げるよ』とクロージングし、ホストの売り掛けが200万のところ、800万の借用書を書かせて、女はカラダを売り続けさせられた。それでも10年前の真栄原はまだ景気がよかったから、1年後、300万ほどカネを作って帰ってきましたよ」

置屋の内部。ここで売春婦たちが斡旋されていた(著者提供)

 宮下が話した内情は、さらに売春島の闇を色濃くした。真栄原に沈められた女からすれば、元金の4倍もの借金を返済したことになるが、女の作った、有って無き借金に群がる男たちの中にヤクザも介入しているのは間違いないようだ。

 しかし、疑問もある。宮下の話すブローカーは直接、店と取引した方が実入りはいいはずなのに、どうしてヤクザを頼るのか。一介のスカウトマンである半端な宮下は別として、素性が知れず、ともすればヤクザかもしれないブローカーなら、ヤクザを飛ばして仕事をしたとしてもおかしくない。