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地雷原の中を抜けていく

「準備!」と号令が戦線をわたっていった。真夜中がちょうど過ぎたばかりであった。巻煙草の火がもみ消され、火器と装備がふれあって、かたかたと鳴り、暗い人影があちらこちらで立ち上がった。私たちは車に乗りこみ、目標近くまでしばらく静かに走った。私たちは車を降り、目を見張り、耳をすまして、残る数マイルを徒歩でひそやかに前進した。大空の半天右に北極星が輝いて、私の道しるべになった。

典型的な砂漠の会戦像 ©エルヴィン・ロンメル『「砂漠の狐」回想録ーーアフリカ戦線1941~1943』(大木毅訳・作品社・2017年)

 私たちは地雷探知機を操作しはじめたが、前進を妨害する地雷はなかった。貝がら――大昔、地中海の波がこの砂漠の高地を洗っていたころの遺物――が、靴の下でぎしぎしと砕けて、その音にひやりとした。

 やがて鉄条網が闇のなかにぼうっと浮かび上がった。地雷探知機の針が動きはじめ、機械は含み声で警告を歌いだした。敵の全線は静まり返っていた。時折り砲弾が頭上高くをひゅうっとうなって通り過ぎた。

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 歩兵が静かに這って位置についた。掩護をかためてから、数人の突撃工兵が鉄条網へ、近づいて行った。音一つ立てずに、彼らはからみにからんだ鉄線を切り、かなりの数の地雷を掘りだした。私たちは腹這いになって、切迫した暁の瞬間を待った。

砲撃の爆音と静寂

 一方でヴィッカース製の砲が断続的に鳴るのが聞え、つづいてドイツ軍の機関銃がもっと矢つぎ早に射ちだした。側面のわが攻撃部隊が敵と接触したか、それともおそらく敵の偵察隊と衝突したのにちがいない。だがしばらくすると、またも静けさだけとなった。私たちはじっと攻撃の合図を待った。

 空がしらみはじめた。やがてすっかり夜が明けきった。わがほうの砲が火蓋をきった。はじめ個々に、そしてしだいに激しさを増して、敵の周辺に砲弾がふりそそいだ。最初の砲撃の一弾が、私たちの前方、わずか数ヤードのところで炸裂した。信号弾をあげて注意しなければならないかと心配した。信号弾を射てば私たちの位置が敵にわかってしまう。だが弾幕は徐々に前へ進んだ。

 やがてごうごうと、爆音がひびいてきた。わが急降下爆撃機の編隊が近づいたのである。用心しながら私たちは持参の標識をひろげた。前に味方の爆撃をくった経験があった(エル・アラメインでも同じようなことが起こった)。

 戦闘ははじまった。