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42歳で亡くなったドナルドの兄
フレッド2世はドナルド・トランプの8歳年上、5人兄弟の長男で、父フレッドの名を授けられた。父フレッドは12歳で父親をスペイン風邪で失い、高校に通いながら自分でボロ家を修繕して転売する仕事を始めて、一代で不動産帝国を築き上げた叩き上げだった。長男に、家業を継がせるため、ビジネス大学の名門、ウォートン校に進学するよう命じたが、合格できず、別の名門校リーハイ大学に進学した。実はフレッド2世はビジネスに興味がなかった。飛行機のパイロットになりたかったのだ。
既に自家用飛行機を乗りこなしていたフレッド2世は、1964年、TWA(富豪ハワード・ヒューズの航空会社)のパイロット候補生になった。その進路にトランプ一族は反対し続け、激しくプレッシャーをかけた。板挟みになったフレッド2世は酒に溺れ、それが原因でTWAをクビになった。
フレッド2世はトランプ一族の事業に参加したが、挫かれた夢からは立ち直れず、ますますアルコールに依存し、離婚する。
そんな兄を、弟ドナルドは激しく批判し続けた。父が望むとおり、ウォートン校に入り、父の仕事を手伝い、父に気に入られ、不動産帝国の後継者になった。まるで映画『ゴッドファーザー』の三男マイケルが、気の弱い兄フレドを押しのけて、父のマフィア帝国を継いだように。
マイケルは兄フレドを殺したが、ドナルドの兄フレッド2世はアルコールで体を壊し、42歳で亡くなった。だが、ドナルド自身が「私と父が兄を追いつめたせいだ」と、珍しく後悔している。トランプが決して酒を口にしないのは、兄の悲劇を見たからだという。