コロナ禍の中、11月に大統領選を控えるアメリカ。コロナ対策よりもビジネスにご執心なのはトランプのような政治家ばかりではなく……。『トランピストはマスクをしない』(文藝春秋)から著者の町山智浩氏が語る、女優の怪しげなビジネスとは。
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グウィネス・パルトロウがアメリカに菌を持ち込む?
景気がいい時、現職の大統領はたいてい再選される。当たり前だ。ドナルド・トランプが大統領に就任してから2月21日までの3年間でダウ平均株価は1万ポイントも上がった。
11月の大統領選挙でトランプに立ち向かう民主党の候補は誰になるか、これを書いている時点では決まってないけど、社会主義者のバーニー・サンダースだろうと、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグだろうと、秋までこの好景気が続けば、トランプの再選は間違いない─。
そう思われていた。
ところが、2月24日月曜日に株価はいきなり1000ポイント落ちた。コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を恐れてだ。トランプはツイッターで国民に平静を求めた。
「コロナはアンダーコントロールだし、株価も非常に良い感じで始まったように見える。オレには」
ところが下落は止まらなかった。結局、金曜日までに3500ポイント落ちた。つまりトランプが3年間で上げた信用の35%をたった5日間ですってしまったのだ。ラスムッセン・レポートによれば、大統領の支持率は47%に落ち始めた。
パンデミックの可能性を警告するCDC(米疾病予防管理センター)に対してトランプは「恐怖を煽るな」とツイートした。それよりもトランプは来期のCDCの予算を16%も削減しようとしていたことで、民主党の大統領候補たちから批判されている。
そんな今、2011年の映画『コンテイジョン』のネット視聴数が急激に伸びている。未知の脳炎の世界的流行と、一刻も早くワクチンを開発しようとするCDC、デマゴーグによるパニックを描いている。冒頭、ハリウッド・スターのグウィネス・パルトロウが香港旅行でアメリカに菌を持ち込んで脳炎でいきなり死体になる展開がショッキングだ。
そのパルトロウがインスタにあげた写真が炎上した。飛行機の席で黒いマスクをした自分の写真にこんなコメントをつけたからだ。
「パリ行きなの。パラノイド? プルーデント(細心)? パニック? プラシッド(平静)? パンデミック? プロパガンダ?」