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「需要あるのかな」事故で脊髄損傷の28歳アイドル、劇的復帰の原動力

仮面女子・猪狩ともかさんインタビュー #1

2020/10/04

啓発のつもりで書いたことが、批判されて

――アイドルファンに限らず大勢の人に名前が知られるにつれ「障害で売名した」というバッシングが増えたそうですね。他にはどんな批判がありましたか?

猪狩 最近だと、猫に噛まれたことをブログに書いたんですよね。「麻痺をしていると噛まれても気付かずにいっぱい血が出ちゃうこともあるんだよ」っていう危険性を伝えたくて書いたんですけど、それが記事になったら応援してくださる方以外も見るわけじゃないですか。そうすると「被害者意識が強すぎる」だとか「虐待してるんじゃないか」とか書かれて……。

 

――ひどい!

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猪狩 事故後はそうやってニュースに取り上げていただくことが増えた分、見る人も増える。そうすると好意的でない声が必然的に増えますよね。だから、仕方ないことだなとは思いますけど。

「ポジティブで明るい猪狩さん」に近づいていかないとな、と

――それには猪狩さんに聖人君子というか、非常にポジティブなイメージがあるのも一因かと思います。そこから逃れたいと思うことはありますか?

猪狩 事故から復帰したての頃は、辛いことがあっても「誰にも出しちゃ駄目なんじゃないか」って思ってしまって。「猪狩さんはすごく前向きでポジティブで」というふうに周りから言われることが、プレッシャーというか、重荷になってしまった時期はあったんです。

――転換点はありましたか。

猪狩 YouTubeで乙武さんとコラボした時に、乙武さんが「今までそういうふうに扱われることが嫌で逃げてきたけど、周りが思ってくれている自分に近付こうとしなかった」とおっしゃってたんです。

 それを聞いて、私も「ポジティブで明るい猪狩さん」って周りが思ってくださっているのなら、そういう自分でい続けるというか、どんどん近づいていかないとなと思いました。

 

 それに、今はうまい息の抜き方を覚えたというか。趣味に逃げたり人に話すことで、表でネガティブな発言をするのではなく、プライベートな部分でうまく発散できるようになりました。

(#2「『しゃべくりに障がい者は出てない』…“車椅子アイドル”への葛藤」に続く)

写真=杉山秀樹/文藝春秋

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