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「需要あるのかな」事故で脊髄損傷の28歳アイドル、劇的復帰の原動力

仮面女子・猪狩ともかさんインタビュー #1

2020/10/04
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車椅子に乗っているアイドルなんて「いていいのかな」って

――仮面女子に昇格後の2018年に事故で脊髄を損傷した後は、アイドル復帰を目指してリハビリを続けていかれます。入院中のエピソードは、とても微笑ましく楽しそうなものでした。

猪狩 最初に入院していた急性期の病院はおばあちゃんがすごく多くて、癒されました。

――「離れるのが寂しい」というくらいご自分の場所にされていたのは、やはりお人柄なのかな、と。

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猪狩 3人きょうだいの末っ子なので、そんなに人見知りとかはしないかなと思います。入院生活、楽しんでましたね。

 

――病院で復帰に向けて前向きに取り組む中でも「需要あるのかな」という言葉が繰り返し出てきたのが印象的でした。

猪狩 怪我する前はあんまり「需要」とかっていう言葉は考えたことがなかったんですけど、少なくとも私は車椅子に乗っているアイドルって知らないので「そんなアイドル、いていいのかな」みたいな葛藤はありました。

――アイドルというものをどう定義しておられますか?

猪狩 キラキラしていて、見ている人を元気にしたり幸せにする存在だと思っています。存在そのもの、という感じですね。

――尊敬するアイドルは?

猪狩 私、『BABYMETAL』の菊地最愛ちゃんが大好きなんです。BABYMETALの母体ユニット『さくら学院』というユニットに所属していた時からずっと追いかけていて。私より全然年下なんですけど、プロのアイドルなんですよ。あざとかわいいと言いますか、誰をも虜にしてしまうようなアイドルなので、私も何度も釣られましたね(笑)。頭の良い方なんだろうなって思います。

「いなきゃいけない」という存在でありたい

――アイドルの中には、歌やダンスよりも特典会、話題性、物語性といったところを重視する方針に対して拒否感を持つ方もいると聞きますが、ご自身はどうですか。

猪狩 仮面女子もライブの後に握手会やチェキ会(アイドルとファンが一緒に写真撮影するイベント)があったりするので「それも含めてアイドル」なんじゃないですかね。昔のアイドルって本当に手の届かない雲の上の存在だったと思うんですけど、今のアイドルは距離が近くて接することができるのが当たり前なのかなと思います。

 

――『モーニング娘。』のオーディションでは「モーニング娘。を焼きそばにたとえると、あなたはどの部分ですか」という質問があるそうで……仮面女子を焼きそばにたとえると、猪狩さんは何だと思いますか?

猪狩 えー……紅ショウガとかですかね(笑)。アイドルはセンターになりたいって気持ちを持っている子が多いと思うんですけど、私はあまりなくて。センター向きの人間じゃないことも自分で分かっているし。

 でも紅ショウガって、端っこにいるけど存在感があるじゃないですか。誰がどう見ても中心人物、というわけではないんだけど、でも、いなきゃいけないという存在でありたいなとは思ってますね。

――確かに紅ショウガがない焼きそばなんて考えられないですよね。

猪狩 そうですよ。絶対つけたいですもんね。