「Mは、会社員のかたわらでサイドビジネスも行っていたのですが、その実態はマルチ商法そのものだったんです」と話すのは、Mの知人男性だ。
逮捕された社員の不穏な素顔とは
Mの本名でネット検索すると、「R合同会社」なる企業のサイトがヒットする。サイトの記述によると、この企業は、サッカーをはじめとするスポーツデータ解析ソフトの開発販売を行っているという。要はスポーツギャンブルの予想ソフトである。事件発覚まで、この企業の代表者を務めていたのが、Mだったのだ。
「同社はこの予想ソフトをマルチ商法のスキームで販売していました。会社化されたのは昨年10月ですが、すでに数十人の会員がいたようです。Mは、この会員らにも持続化給付金の不正受給を持ち掛けていた。それだけではない。Mは新規会員の獲得の際にも、持続化給付金を餌にしていたようなんです。つまり、不正受給を指南する代わりに、振り込まれた給付金で予想ソフトを買わせていた」(知人男性)
Mは、自社が手掛けるマルチ商法の会員にすることで、不正受給させた給付金を吸い上げていた可能性がある。こうした手口については、拙著「ルポ新型コロナ詐欺」の中でも詳報しているとおり、マルチ商法を手掛ける複数のグループで用いられている常套手段である。
さらに、この知人男性によれば、少し前にはMはアヤシイ仮想通貨への投資も周囲に呼び掛けていたという。
「3年ほど前の仮想通貨バブルのとき、彼は聞いたこともないマイナーコインやICOへの魅力を熱心に語っていた。私も投資を誘われたのですが、断ってよかった。結局、その仮想通貨の案件が仮想通貨バブルの崩壊とともにダメになった結果、予想ソフトを手掛けるようになったようです」
社内での立場を失ったことはもちろん、今後の捜査の進展によっては刑事的責任も問われることになりかねないM。こうした持ち前の山っ気がアダとなったか。