モダンダンスの始祖、イサドラ・ダンカン(1877~1927)。20世紀初頭、ダンスに革命を起こした伝説的な女性の人生には知られざる悲劇があった。幼い二人の子を襲った突然の事故死。イサドラは、絶望にくれながら子どもたちに捧げるダンス「母」を作り上げた。
映画『イサドラの子どもたち』(9月26日公開)は、イサドラの悲劇の物語、そして彼女が創作したソロダンス「母」に触発され作られた。監督は、以前、五十嵐耕平との共同監督による『泳ぎすぎた夜』を日本で製作した、フランスの俊英ダミアン・マニヴェル。元ダンサーとしての経歴を生かし、全く新しい視点でイサドラの人生とダンスに向き合い、3つの物語を描き出した。
映画は、一見バラバラに見える3つの物語から成る。舞踊譜から「母」の踊りを読み解こうとする若い女性アガト。「母」の公演を準備する振付師マリカとダンサーのマノン。公演を観劇した老いた女性エルザ。それぞれの物語はゆるやかにつながりあい、やがて大きな感動を呼び起こす。
役とも重なっていく演者の人生
――まずはイサドラ・ダンカンとの出会いについて教えてください。どのようにしてこの伝説的なダンサーを知り、このような形での映画化を思いついたのでしょうか。
ダミアン・マニヴェル 僕は監督になる前はダンサーだったので、イサドラ・ダンカンのことはよく知っていました。彼女はダンスに革命を起こした非常に重要な人物だし、その自伝も読んでいました。この映画の当初の企画は、ただダンスをテーマにした映画を作るというものでした。でも準備中にイサドラのソロダンス「母」の存在を知り、それをもとに新しい物語を書こうと思いついたんです。彼女は二人の子どもを亡くす悲劇を体験しましたが、その経験から一つの作品が創造された。彼女の人生とダンスとの強い融合に深く感動したんです。そして映画のテーマは、人間の苦悩をどのようにダンスに移し替えるかという視点に変化していきました。イサドラの物語をもとに、ダンスというものが人生とどう結びついているかを語りたかったんです。