ときにはフィクションの方がずっと真実に近い場合もある
――演じる俳優自身の人生や感情を重要視されているということですが、一方で監督はフィクションとしての映画を作っているわけですよね。出演車たちのポートレイトだと言いつつも、ドキュメンタリーとしてではなく、フィクションという枠を課したのはなぜでしょうか。
ダミアン・マニヴェル それを説明するのはちょっと難しいですね(笑)。一つ言えるのは、僕はドキュメンタリーを撮ることにはまるで興味がないんです。ドキュメンタリー的なプロセスには興味があるけれど、僕はそこに必ずフィクションを必要としています。映像のなかに精度の高さや詩情を見出すためには、必ず何らかのフィクションが必要になる。それがあることによって、個人的なアイディアや本を読んで感じたこと、人々から受ける印象などをすべて融合することができる。何らかの虚構や物語があるほうが、より自由に、新しいものを付け加えることができるんです。ときにはフィクションの方がずっと真実に近い場合もある。僕はそう信じています。
――最後に出演者についておうかがいします。みなさん素晴らしい存在感を放っていましたが、特に最後のパートに出演されたエルザ・ウォリアストンさんの力は圧倒的でした。彼女とはどのように出会ったのでしょうか。
ダミアン・マニヴェル 実はエルザはダンサーとしても振付師としても、世界的にとても有名な人です。日本の舞踊家、矢野英征(1943~1988)とはフランスでカンパニーを立ち上げ活動を共にしていました。エルザと出会ったのは12年前。短編『犬を連れた女』(2011年)を彼女と一緒に撮り、もう一度彼女と仕事がしたいと強く思い、今回の作品にも出演をお願いしました。次回作では彼女が主演する映画を作る予定です。
Damien Manivel/1981年、フランス生まれ。コンテンポラリーダンサーとして活躍後、映画監督に。五十嵐耕平との共同監督作品『泳ぎすぎた夜』(2017)等を発表。『イサドラの子どもたち』でロカルノ映画祭最優秀監督賞を受賞。
INFORMATION
『イサドラの子どもたち』
9月26日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
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