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文禄元年(1592)に積まれたとみられる東ノ丸北面(丑寅櫓下)の石垣は、城内でもっとも古く、自然石や粗割しただけの石が緩い勾配で積み上げられています。
もっとも印象的なのが、長方形の石を段違いに組み合わせた、玉泉院丸庭園に面した斜面の「色紙短冊積み」。石垣の上部に滝を組み込んで庭園の借景とした、見事な意匠です。
赤色と青色が混ざったカラフルな石垣も、金沢城の特徴です。どちらの石も、金沢城から8キロほど東にある戸室山で採れる「戸室石」という安山岩。溶岩が冷えるときの条件で、赤や青に変色します。城内の石垣は「刻印石」が多いのも特徴で、その数は200種類以上に及び、刻み方が大胆なのが印象的です。
海鼠壁や出格子窓など、建物も独創的
建造物にも独創性が光ります。まず目につくのが、海鼠壁(なまこかべ)。土蔵などに使用される白と黒の格子模様の壁で、壁面に平瓦を貼り付け、つなぎ目に白漆喰を板かまぼこのように盛り上げて塗り固めます。
こうすることで、下見板張りよりも耐火性と耐水性が上がります。新発田城(新潟県新発田市)にも見られる、寒さの厳しい北陸地方の城の特徴です。屋根に葺かれた鉛瓦も、何とも言えない美しさです。太陽の光を受けると白くキラキラ輝いて、グラデーションがかかったやさしい風合いになります。
そして、意匠の最大の特徴といえるのが、唐破風付きの出格子窓。石垣や櫓の壁面に設けられた大きな出窓で、床面の石落としから石垣をよじ登る敵を攻撃できるだけでなく、壁の左右の小窓から側面攻撃もできるようになっています。
格式の高い唐破風をつけているところに、前田家の美意識の高さを感じずにいられません。