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新たな見学スポットも誕生
海鼠壁、鉛瓦、唐破風付きの出格子窓はいずれも、現存する石川門と三十間長屋で見ることができます。美観と実用を兼ね備えた寒冷地ならではの知恵に、誰もが感服してしまうはず。石川門は金沢城の搦手門(裏門)で、高麗門、櫓門、二重二階の石川櫓、続櫓、南北の太鼓塀で構成された貴重な現存枡形門。城内のほとんどの建物が焼失した宝暦9年(1759)の大火の後、天明8年(1788)に再建されました。
三十間長屋は2階建ての土蔵。建物の実際の長さは30間ではなく、26間半(約48.2メートル)です。南面は入母屋造りで、北面は土台の石組よりも外壁が下がった切妻造り。西側(背面)は千鳥破風と左右に唐破風付きの出格子窓があります。安政5年(1858)に建てられ現在に至ります。
金沢城内は復元工事が盛んで、令和2年(2020)には、鼠多門と鼠多門橋が復元されました。鼠多門は玉泉院丸の北西に位置する門で、金谷出丸(現在の尾山神社境内)とを鼠多門橋(木橋)で繋いでいました。創建時期は明らかではありませんが、17世紀中頃には存在したと推定されます。
宝暦9年大火では焼失しておらず、明和2年(1765)に鼠多門橋の架け替え、文化9年(1812)に鼠多門長屋の修理、文政4年(1821)に門付近の武具土蔵の新築などの記事が文献でみられます。金沢城の新たな見学スポットになりそうです。
撮影=萩原さちこ
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金沢城をめぐる旅の模様は、「文藝春秋」10月号の連載「一城一食」に掲載しています。
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