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1泊2日の台南旅行で……

 一方で櫻井氏は「打ちとけてみると李登輝氏は限りないあたたかさと寛容の人で、何よりも朗らかだった」として、2004年には李氏夫妻と共に台南を旅行したことを明かした。この旅行で最も思い出に残っているのが、台湾を代表する財閥「奇美実業」創立者、許文龍氏が李氏夫妻と櫻井氏を連れ出した魚釣りとそれに続く夕食会だった。

「帽子をかぶったりして船上に立った私たちを乗せるとエンジンがかかり、船は網を引きながらゆっくりと海に出た。トントントン、トントントン。魚を追い込む音がする。波もなく穏やかな海をこうして周遊し、港に戻ってみて驚いた。網が巻き上げられると太った立派なボラが数十尾も或いは100尾以上(恐らく)もかかっていたからだ」

©iStock.com

 その後に開かれた夕食会では、見事なボラの蒸し料理などが振る舞われたという。

「食後、10丁程にも上るストラディヴァリウスのコレクションから許文龍氏がひとつを取り出して弾き始めた。許文龍氏からストラディヴァリウスを貸与されて一流の音楽家を目指している若い台湾人ヴァイオリニスト二人も加わった。彼らは見事な曲を演奏したが、やがて日本の唱歌になった。許文龍氏らが弾き、私たちが歌った。『故郷』『月の沙漠』『荒城の月』『花』などを、李登輝氏も曽文恵夫人も皆が声を揃えて歌った。歌詞が大きな字で書かれている歌集もちゃんと揃っていた」

出典:「文藝春秋」10月号

「文藝春秋」10月号及び「文藝春秋digital」に掲載した「追悼 李登輝――日本人より日本人らしく生きた97年」では、台湾の民主化に尽くし、中国共産党の暴虐に抗った李登輝氏の生涯について櫻井氏が詳述している。

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