「死刑もやむを得ない」

 内閣府が行った世論調査で、死刑制度の存廃について8割の人がそのような意識を持っているという。遺族であればその感情はなおさらだろう。だが、犯人の死を望まない遺族がいるとしたら――。映画『HER MOTHER』は、娘を殺された母親が死刑判決を受けた娘婿の刑執行を止めようとする心の動きを描いている。佐藤慶紀監督は10年程前にこの着想を得たという。

「ドキュメンタリー番組のリサーチで殺人犯の死刑を望まない遺族がいたと知り、とても意外に思いました。なぜなのか調べ始めると、世界でも同じケースがあったのです」

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 海外では罪人を赦すことが自身の救いにも繋がるという宗教的な理由が見られたが、日本では、信仰は心の支えにとどまることが多い。

「ならばなぜかというと“自然に感情が湧き上がった”ようなのです。それはドキュメンタリーなら受け容れられますが、物語では心の動きを描く必要があり、苦労したところです。この作品は死刑制度の是非を問うものではありません。ただ裁判員制度がある以上、誰もが難しい判断を迫られる可能性があるのです。だからこそ考えるきっかけになってもらえれば嬉しいです」

『HER MOTHER』
9月9日より新宿K'sシネマ他で公開
https://www.hermother-movie.com/