作家・塩田武士さんの最新作『騙し絵の牙』(KADOKAWA 発売中)の主人公・速水輝也は、俳優の大泉洋さんに完全当て書きしたという珍しい作品だ。大泉さんは本の表紙を飾り、各章の扉にも写真で登場している。
「大学生の時、『パパパパパフィー』という番組を観て初めて俳優の大泉洋さんを知り、衝撃を受けました。この人いったい誰やねん、と思って」
塩田さんは、大泉さんのトーク力、総合力、人間としての華に強く惹かれたという。
「大泉さんの大ファンだった私に、大泉さんのエッセイ本を担当した編集者が、彼に当て書きした小説を書いて欲しいと依頼してくれたんです」
速水は大手出版社の雑誌編集長。業界の厳しい状況を背景に、公私にわたって次々と困難にぶつかる姿を描く。
「完成された大泉さんを放り込んでいけばいいので、書く不自由さはなかったです。他の登場人物とのいじり合いのトークはもちろん、状況にいじられる姿も大泉さんの真骨頂。書けば書くほど、速水を好きになっていきました」
ものまねでピンチを切り抜けるなど、大泉さんの特技を生かした場面も。ところで、タイトルの「騙し絵」とは?
「華のある人は、その分陰も濃い。速水の持つ裏の顔に、ぜひ騙されて欲しいですね」