パンダのハイテクすぎる“婚活”の実態
シャンシャンとペアになる相手は、どうやって探すのだろうか。
中国の基地では、パンダの遺伝的情報をもとに、条件に合致した候補を選定するという方法をとっている。これは、遺伝情報を調べることにより、遺伝的に近い異性を避けて、遺伝子の多様性を保つため。
野生のパンダもメスはオスに比べて移動する距離が多く、分散する生態を持っているが、これもひとつは近親交配の回避のためと言われている。同じような遺伝子しか持たない個体ばかりだと、
しかし、仮に遺伝的にふさわしい相手が見つかったとしても、シャンシャンがお相手を気に入るかは別の話。交尾のときには、一時的に雌雄を同じ部屋に同居させる必要があるが、最初の同居に失敗した組み合わせの雌雄は一生同居できないと言われているため、この同居のタイミングには基地の関係者も非常に気を使っている。
パンダの交尾可能な日は、年に数日と極端に短く、繁殖に適した日を見極めるのもとてもむずかしい。中国の基地では繁殖の専門家が、メスの恋鳴きと呼ばれる発情期の鳴き声や、発情の兆候となるエストロゲンのデータから、同居に最適な時期を判断する。
さらに、交尾予定のオスとメスの部屋を交換することにより、
パンダはマーキング時に分泌されるフェロモンで、コミュニケーションをとっていると考えられているが、繁殖に関係するフェロモン自体は、残念ながらまだ特定されていない。上野動物園では嗅覚によるコミュニケーションが、自然交配の成功率に影響しているという研究結果もでている。このコミュニケーションは繁殖のための有効なプロセスといえるだろう。
注目の新施設「パンダのもり」へは引っ越さず
2020年9月に新しく一般公開した施設「パンダのもり」。先日、シャンシャンはこの施設への引っ越しをしないことが発表された。パンダのもりでシャンシャンを見られないのは残念だが、新施設への引っ越しには、慣らしなどのために3週間程度の非公開期間が必要となる。引っ越しによって、私たちがシャンシャンに会える機会を減らさないためにという同園の心づかいだ。
とはいえ、パンダのもりはシャンシャンにとっても魅力的な施設だ。緑豊かな上野の森を借景に、運動不足を防ぐための起伏にとんだ屋外放飼場、暑さに弱いパンダが日差しを防げる洞窟などがある。生息地の四川省を意識した造りで、野生のパンダが行う自然な行動を、飼育施設でも再現できるように工夫してある。
繁殖に関しては、旧パンダ舎にはない保育室もできた。保育室では出産時の看護や子育ての補助、さらに子どもの健康診断を行うことができる。パンダは約50%の割合で双子を産むというデータがある。そのため、双子が連続して生まれた場合を想定して、最大6頭の飼育が可能なスペースを確保しているのだ。
ほかにも、24時間パンダの行動を録画し、確認できるモニター室や、繁殖のためのホルモンを調べる検査室など、飼育環境だけではなく研究のための設備も充実。せっかく設備が整ったのだから、シャンシャンに「日本に残ってお婿さんを迎えてほしい」というファンの気持ちにもうなずける。