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黙ってみとけ。ベイスターズには木塚敦志が必要だ

文春野球コラム ペナントレース2020

今も死ぬほど考え、もがいているに決まっている

 今シーズンのはじまる前。「ベイスターズは優勝するんじゃないか」なんて言われていた。あの大魔神佐々木さまが、初めて優勝予想の詔を出され、すわ22年ぶり! と期待も高まったのだが、気が付けばすっかり秋だ。ジャイアンツは遠い。空席が見える球場も、冷たい空気のなかにやり場のない哀しみとも怒りともつかない感情がうっすら滲むのも、どこかで感じた季節。

 結果が出ないと周囲からいろんな雑音が出てくるのは今も昔も大して変わりゃしない。そりゃ、トゥモローイズアナザーチームのように思える采配は、大当たりすることもあれば、その逆もある。先日の文春野球で野村弘樹さんも言っていたように「おかしい」と思うような采配も、外から見ただけでは、本当の理由はわからない。「継投は、その時チームが総合判断した最善策。批判は絶対にしない」というtvk吉井さん。さすがの信念だ。その通りだよ。

 今シーズン、テレビの中継がラミレス監督を抜くと、その横にはベンチコーチになった木塚がいつも映っている。今はマスク姿で荒ぶることもなく静かにメモを取る。ピンチを迎えるとマウンドへ向かうが、ダッシュはしない。当然だ。ゆっくりと間を取りながら歩いてくる。

 かつてマウンドとベンチ間はダッシュでしか移動したことのない人が、マウンドにジリジリとにじり寄り、バッテリーに冷静に話しかける。その姿は世界中の野球場のどこにでも見られる光景なのだけど、絶体絶命のピンチや物議を醸しそうな不可解な感じの出来事が起こるたび、俺には木塚がマウンドで必死に穴を掘る姿が見える。1%でも可能性が上がることを信じ、もがきつづける木塚の必死な姿が見える。

 それは他でもない木塚だからだ。世界で一番勝負に熱くて、這い上がろうとする選手のためになら血を流すことだって厭わない勝負の鬼。その局面で何が一番いい方法なのか、今も死ぬほど考え、もがいているに決まっている。

 東京ドームで、悔しくて泣いた思いも今ならいえる。黙ってみとけ。ベイスターズには木塚がいる。

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