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――そういえば、新谷編集長と通っている床屋が同じだったとか?

みうら そうなんですよ。床屋に新谷さんの本(『「週刊文春」編集長の仕事術』ダイヤモンド社)が置いてあったんでね、「こんなところにも置いてある。売れてるな〜」と思っていたら、床屋の人が「新谷さん、うちに散髪にいらしてるんですよ」とおっしゃって。どうやら新谷さんがその店に本を置いていったらしくって(笑)。でも文春から離れた場所だし、自宅からも遠いはずだし、なんであそこにわざわざ通っているのか謎なんですよね。

――すごい偶然ですよね。髪型全然違うのに。

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みうら 『人生エロエロだもの』に載ってる対談でも話していますけど、新谷さんとは、おかしな縁が昔からあってね。

――この連載は、挿絵もみうらさんが描かれています。掲載はモノクロですが、実際は色鉛筆を使ってカラーで描かれているんですよね。初期はペンでモノクロの線画で描かれていましたが、リアルなタッチの色鉛筆画に変えたのはなぜですか?

みうらさんのイラストの原画はなんとカラー作品。週刊誌に載せるにはもったいないですが。

みうら 僕の職業は「イラストレーターなど」なので、昔から自分のエッセイに自分でイラストを添えることが多かったんですが、これまでは「イラストでも笑わせよう」と思って描いてきたんです。でも、エロ話の場合、「文章で笑わせて絵はリアル」というほうが、そのギャップで面白い場合もあるなと思ってね。文章の仕事も長くやっていますけど、イマイチうまくならなくて(笑)。だから文章のリアルさを補うために、絵をリアルタッチにしよう、と思ったのかもしれないですね。

――新聞小説の挿絵みたいな趣があります。

みうら 「週刊文春」の僕の連載ページって、実はどこにも「絵 みうらじゅん」って書いてないでしょ。「題字 武田双雲」とは書いてありますけど(笑)。だから「画家の先生が僕のエッセイの挿絵を描いてくれている」ように思われたくて、自分に自分で発注して描いているんです。気分は松本清張の小説の挿絵画家になったような感じですかね(笑)。

――今回の単行本に収録された絵の中で一番のお気に入りはどれですか?

イラストレーターとしてエポックメーキングな作品となった「湯豆腐」。©みうらじゅん

みうら 「湯豆腐の絵ですね。湯豆腐って難しいんですよ、軟らかい質感を出さないといけないですし。あれが描けたとき、「もう何でも描ける」って自信がついたんです。でもそのあと、『あぶない刑事』の舘ひろしさんと柴田恭兵さんの似顔絵を描いたときに、「写真により近づけようとしているだけの絵だ」と気がついて。「そんなのやる意味あるのかな?」って思いましたね。昔は「一生懸命描いているのに似てない似顔絵」で笑いを取ってたクチなんですが(笑)。

こちらも、絵描きとしての転換点となった作品『あぶない刑事』。©みうらじゅん

――毎週描いているうちにうまくなっちゃったんですね。

みうら そりゃあうまくもなりますわ(笑)。還暦目前に絵がうまくなることに対して、「どうなのかな?」って気持ちもあるんですがね(笑)。今後、文章をより面白くしてくれる絵が描きたいだけです。直接的なエロい絵じゃなくて、文章の中に出てくるものの中からピリリと利いたモチーフを選んで描くという作業なので、作画にも時間がかかるんですよ。最後にイラストでも「プッ!」と笑ってもらえれば、それで「ポップ恥さらし」は完成なんですけどね。

人生エロエロだもの

みうらじゅん(著)

文藝春秋
2017年10月6日 発売

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