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――『人生エロエロだもの』に収録した原稿の中に、オチが被っていた話があって、慌てて直されていましたね。

みうら いやぁ、ついに「老いるショック」がきちゃいましたね(笑)。最近、他誌の連載でも同じネタで書いちゃったことがあるんですが、「何だか今日は筆が乗るな〜」と思っていたら、前々回に書いたネタでした(笑)。書いたことすら忘れてしまっているんですよね。

――今回の新刊の帯には、大きな字で「老いるショック」と入れさせていただきました(笑)。

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新谷編集長の名言「親しき仲にもスキャンダル」にインスパイアされた(!?)帯文。

みうら 若い頃の「懐かしエロ話」ばかり書くのは、やっぱずるいじゃないですか。「こいつ、昨今の話を避けているな」と思われるのは悔しいんです。回顧ばっかりもしていられないので、「老いるショックが始まって勃たなくなってきた」って話も書かざるを得ないわけで……。今後、この連載がどこに向かっていくのかは、自分でもわからないですけど、僕の性癖のヤバさがどんどんエスカレートしていく可能性もあるわけですよ。だって、とうとう60代の熟女のエロ本に手を出すまでになってますからね(笑)。

――60代! って言っても、同級生くらいじゃないですか(笑)。

みうら まあ、そう言われたら、そうなんですけどね(笑)。

――新刊の巻末に載っている「週刊文春」の新谷学編集長との対談で、編集長から「みうらさん版の『瘋癲老人日記』を書いてほしい」と依頼されたという話が出てきましたが……。

みうら そのことが僕の中では大きいですね。それって、「現在進行形のリアルな性癖も書いてください」という依頼なんだなとわかったので、困ったな、と(笑)。最初、連載の依頼をお受けするかどうか悩んだのは、「老いるショック」以降のことも書かないといけないな、と思ったからで……。だから今は、あえてエロの汚名を着て、他人のエロ話まで自分がやったように書いたりしているんです(笑)。

――他人のエロを被るって、今まで誰もやっていない手法ですよね。やってないというか、やりたくないというか……(笑)。

みうら 僕がやってることは、基本、「恥さらし」なんです。「人生エロエロ」は、「恥さらしをいかにポップにするか?」と思って挑んでいる連載なんです。だけど、子供が保育園に通ってた頃、お母さんたちに「『文春』読んでますよ」と言われ、どう対応していいのかわからなくてね。「ポップ恥さらし」のつもりでも、やっぱり“後ろメタファー”があって、陽気に「どうも〜!」とは言えませんでしたね(笑)。

――でもみうらさんは、80年代から「親に自慰が見つかってベッドに大の字にくくりつけられた」という漫画を描かれていましたし、昔から「恥さらし」に挑んでおられるな、という印象があります。

みうら 「恥さらし」って人から言われるとやっぱキツイですね(笑)。先人がやっていないオリジナルなことを表現しようと思ったとき、「恥さらし」しか残っていなかった、と言ったほうが正確かも(笑)。世の中にはいろんな「隙間産業」がありますけど、「恥さらし」だけは太古の昔からあまり手をつけられずに残っていた。それは誰もやりたがらないから(笑)。恥をさらしてナンボなんですけど、読者が「醜悪だな」と感じる恥さらしは嫌じゃないですか。僕は根が意外と上品なもので、思いっきり下品な恥さらしはできないんですよね。目指すところは、「上品でポップな恥さらし」です。それってまだ“ない”仕事でしょ(笑)。

「恥さらし」と言っても、「僕は上品なんです」。©みうらじゅん