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2020/10/08

source : 文春新書

genre : ビジネス, 企業, 社会, 経済

「残酷な殺され方だけは勘弁してほしい」

「お前、殺す」「目玉をつぶす」などの電話を何度も受けた上場企業の元総務部長は、当時のことを思い出すと、今も恐怖が蘇ってくるという。

「阪和銀行副頭取射殺、富士写真フイルム専務刺殺、住友銀行名古屋支店長射殺と、当時は企業テロが次々と起こり、身の危険は、どこの企業の幹部にもあったのではないか」

 当時、企業幹部の間では防弾チョッキを着用した方がよいのではと話し合うほどだった。企業テロが連続発生していたころ、元総務部長は一時期、会社の最寄り駅を降りると、毎朝のように拳銃を携帯した知り合いの捜査員が同行してくれたという。

©iStock.com

「最初は駅で『偶然ですね』などと話しかけてきて、会社まで一緒に歩いてくれた。翌日も『また会いましたね』と声を掛けてきて、会社まで同行してくれた。これが毎日のこととなっていった。すぐに企業テロに備えて警護してくれているのだと気づき、非常にありがたかったし、心強かった」

 しかし、会社の正式な業務としてやっているのに、企業テロの標的にされるのは、あまりにも理不尽だという思いは、今も変わらない。

「総会屋や暴力団、右翼団体などにカネを渡したりする窓口役は会社の命令でやっていたこと。体を張って仕事をして、企業テロの被害者たちは命を失った。妻や子供、家族がいるのにあまりにかわいそうで悲惨だ。自分も事件の被害に遭うのかと思うと恐ろしかった。人はいつか死ぬものだが、このように残酷な殺され方だけは勘弁してほしいと心底思っていた」

 社命で総会屋対策を担当させられた結果、命を落としてしまうのでは、あまりにも見合わない仕事だ。

総会屋とバブル (文春新書)

正洋, 尾島

文藝春秋

2019年11月20日 発売

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