「ケンカの現場で拳銃を相手に向けて発射した時の手ごたえ、強く重い反動はいまだに手に感触が残っている。強烈な発射音も耳から離れない。撃った時の光景はそれこそ一発ずつ、目に焼き付いている」
そう語るのは、かつての対立抗争事件で拳銃を発砲したことがある指定暴力団幹部だ。
山口組が分裂して5年が経過し、これまでの対立抗争事件で9人が死亡。特に、6代目山口組若頭の高山清司が昨年10月に刑務所を出所した前後から銃撃事件が続発している。
同年11月には兵庫県尼崎市内で、神戸山口組系幹部に対して6代目山口組系元幹部がM16と呼ばれる自動小銃を数十発発射して殺害するという凶悪な事件も発生。このため今年1月には、6代目山口組、神戸山口組双方ともに「特定抗争指定暴力団」とされている。
警察庁の統計では、山口組が分裂した2015年以降、暴力団などによる発砲事件で2018年以外は全ての年で死亡者が確認され、昨年も4人が死亡している。暴力団業界と、暴力団を捜査する警察、双方の「拳銃」事情を追った。(全2回の1回目/後編に続く)
拳銃発射の手ごたえ
そもそも、暴力団員はどうやって拳銃の使い方を覚えるのか。
「この稼業に入ったら、特定のケンカで拳銃を使うためという訳ではなくても、将来は必ず拳銃を使うようなケンカがある。そのために毎年のように東南アジアに行って、合法的に拳銃を撃てる場所で練習を重ねていた」(前出の暴力団幹部)
この暴力団幹部によれば、拳銃は一般に持たれているイメージに比べて格段に取り扱いが難しく、「いきなり手渡されたところで、すぐに撃てるようなものではない」という。そして、初めて練習で撃った時の感触が忘れられないと語る。
「まず拳銃自体がかなりの重量がある。銃をしっかりと握り、腰を落とさなければ銃弾は前に飛ばない。射撃場ではインストラクターが銃の握り方から教えてくれたが、初めて撃った時は発射の反動、音の大きさに驚かされた。
実際に発射すると、銃弾は前方にまっすぐに飛ばないものだ。撃った時の反動が強くて、しっかり握っていても銃身が上を向いてしまって、よく見たら弾痕が天井に残っていたこともある。至近距離の2~3メートルだったら的に命中するが、5メートルも離れたら確率はかなり下がる。10メートル離れたらまず命中しない」
しっかりと練習を重ねなければ射撃場の的ですら、まず命中しないという。ドラマや映画では拳銃を片手で握って撃つシーンを見かけるが、実際にはかなり難しいと、この幹部は打ち明ける。
「小型の拳銃は片手でも撃てるが、38口径となると両手で握らないと反動で前に飛ばない。45口径のような大型拳銃になると、片手で安易に撃つと『肩の関節が外れるのではないか』というほど大きな衝撃がある」