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“シャブ”の意外な使い道

 しかし、現在では生命保険などは契約時に反社会的勢力に属していないことを誓約する書類を交わすことになっており、この幹部も「今だったら、生命保険には加入できないだろう」とこぼす。

 ベテラン幹部は、かつて対立抗争で緊張が高まった際のことを振り返る。

「若いころのことだが、ケンカになるかもしれないということで非常招集となった。大慌てで事務所に駆け付けた。急いでいたのでサンダル履きで行ってしまった。すると『なんだ! そのサンダルは。たるんでいるぞ!』と怒鳴られた」

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(写真はイメージ)©️iStock.com

 ヤクザと言えば、毎日のように繁華街を飲み歩いているイメージがあるが、そんなとき“ケンカ”の一報が入ったらどうするのか。

「毎晩飲み歩いていたのはその通り。若いころは本当に毎晩飲んでいた。しかし、酒を飲んで酔っ払っていてもケンカの招集がかかったら行かねばならない。そこで酔いが一発で覚める万能薬がある」

 そう語って笑みを漏らした暴力団幹部は、声を潜めてこう明かした。

「それは、シャブだ」

 シャブとは当然のことながら、覚醒剤のことだ。

「酩酊するほど泥酔していたら効き目があるか分からないが、『いい気分だな』と酔っ払っている程度だったらシャブを打つとすぐに酔いが覚めて頭の中がスッキリする」

 覚醒剤は暴力団にとって商売のタネというだけでなく、ケンカへの備えでもあるようだ。(敬称略)