女性の自殺率はアメリカの1.5倍、イギリスの2倍
——日本の自殺は1998年に急増して年間3万人を超え、2003年をピークに緩やかに減少してきました。しかし女性の自殺は男性ほど減っておらず、さらに2020年の7月以降は異常な増加を見せています。日本の女性に何が起きているのでしょう。
「日本は女性の自殺率が世界でもかなり高い国で、アメリカの1.5倍、イギリスの2倍です。日本より女性が自殺しやすい国は、韓国など数えるほどしかありません。
女性を取り巻く状況は大きく変化していますが、中でも大きいのは、女性が経済力を求められるようになったことでしょう。
日本では、お金を稼ぐことが長い間『男性の仕事』であり、女性の社会的な評価にとって大きな要素ではありませんでした。なので、不景気になって労働者の環境が悪化しても、女性の自殺率は男性ほど影響を受けませんでした。
その後、女性の社会進出が進んだことで女性にとっても経済力は重要だという感覚が広まりました。それ自体は正しい方向だったと思います。ただコロナ禍で社会の経済状況が悪化した時に、『自分の役割を果たせていない』と感じる女性が増えたのだと思います」
男性の自殺率が高くなったのは19世紀から
——圧倒的に高い男性の自殺の方が問題だという主張もありますが?
「世界的に自殺率は男性の方が高く、日本でも2倍以上の差があります。この傾向は19世紀くらいから変わっていませんが、根本的な原因はわかっていません。日本では『男らしさ』のような社会的役割のプレッシャーがまだまだ強いですし、生物的な原因が潜んでいる可能性もあります。
ただ普遍的な構造と同じくらい、起きている変化を注視するのも重要です。男性の高い自殺率はもちろん大問題ですが、ここ数カ月で女性の自殺が急増していることも決して無視できないと思います」