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個人での対策は限界がある

 ——コロナ禍の終わりは見えず、経済的にも難しい状況が続く人はこれから増えていきます。何か自分の精神状態を守る方法はあるのでしょうか。

「私の専門は社会学なので、個人の努力によって問題を解決するというアプローチは取りません。そもそもフェイスは『社会に何を期待されているか、それを自分がどう感じるか』という個人と社会の間にあるものなので、個人だけでは解決できない。むしろ社会の側が、個人を傷つける場面を減らすための努力をすべきです。たとえば差別問題や、SNSでの個人攻撃を解決していくことが大切だと思います」

©️iStock.com

 自殺をはじめて社会の問題として扱ったエミール・デュルケームは、1897年の代表作『自殺論』(中公文庫)の中でこう語っている。

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「自殺者の先行与件のなかに、一般に絶望をもたらすとおもわれるなんらかの事実をいったん発見したと信ずると、人はそれ以上の詮索は不要だと決めこんでしまう」

 個別の原因を探るよりも、人を自殺に追いやる社会の性質に目を向けよというデュルケームの戒めは、120年以上がたった今も有効である。

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