議員は「本音を言うと騒がないでほしい」と言うが……
自民党参議院議員である山田太郎は、9月23日に更新された自身のブログで、「今回、『出版物の総額表示義務化に反対します』との声が多数上がっていることから、消費税の総額表示義務の免除の終了について、9月16日から17日の間、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会に対して、問題点や懸念点等がないかヒアリングを行いました。そうしたところ、それぞれの団体は、現時点では、特段の心配はしていないとのことでした」と報告している。
加えて自身のYouTube動画「【第415回】出版物の総額表示の義務化 #山田太郎のさんちゃんねる」においては、「本音を言うと出版業界は騒がないでほしい」、つまりこの問題に注目が集まってしまうと行政側もグレーゾーン的な看過をすることが難しくなる(この義務はそもそも罰則無しのものであるし、行政側も実際はそこまで厳密に指導できない、というニュアンス)、わざわざ騒がない方がいい、という旨の発言を行っている。
この件における山田のスタンスは基本的に、当事者である業界団体から要望が無い以上、自分も政治家として動きようがない、というものであり、議員の仕事のひとつの進め方としてそれはその通りではある。
前述4団体は2003年に「消費税の価格表示に関する要望書」(「書籍等の出版物は、消費税の総額表示義務付け規定の対象外とする」ことを求めたが、この要望は通らなかった)を財務省に提出して以降、この件に関して要望表明をしていない。
ただ、「本音を言うと出版業界は騒がないでほしい」という山田の意見には個人的には首肯できない。
これまでに業界内でコンセンサスをつくれず、意思表明の流れを生み出せなかったことはまったくもって出版界自身の責任だが、現在の状況下で、「騒がずに国からのお目こぼしをもらおう、グレーゾーンで上手くやっていこう」といった方向を積極的に選択することは、出版業界全体の今後の未来によくないものをもたらすことになるように思う。
今回の件に限った話ではないが、行政のお目こぼしを前提に話を進め、問題について業界内で意見交換・態度表明していく努力を怠れば、出版業界は国に対して確実に、後ろめたい弱みをつくっていくことになる。また、今後罰則ありの形に法改正が行われる可能性だって当然ゼロではない。国に対して忖度・妥協をしないためには、ひとつひとつの問題について業界のなかで合意形成を図る努力はやはり必要なはずだ。