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“総額表示問題”の経緯

 そもそも商品価格の総額表示は、消費税法第63条によって、消費税率5%であった2004年より義務化されている。

 その後2013年、消費税転嫁対策特別措置法第10条により、2013年10月1日から2021年3月31日までの期間(当初は2018年9月30日までだったが、2016年に成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」の施行により延長された)は特別措置として、出版物については総額表示の義務化が免除されることとなった。

 2012年時点で可決されていた、「2014年に消費税8%に引き上げ・2015年に10%に引き上げ(段階的に延期され、実際の引き上げは2019年)」という税率引き上げスケジュールを受けての措置対応だった。前述の文化通信社の記事は、この特別措置は期限を再延長されることはない、という旨を報道するものだったわけである。

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 記事内の記述が「日本書籍出版協会と日本雑誌協会が共催した出版社向けの『インボイス等勉強会』で、財務省主税局税制二課の小田真史課長補佐は『基本的に(特例は延長せずに)終わるとの前提で進めてほしい』と説明した」という簡潔なものだったため、現時点で市場流通している在庫にもこの義務化が適用されるのか等、憶測や懸念を招くこととなった。

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錯綜する報道

 日販通信が9月18日に「日本書籍出版協会(書協)は、『出版社に総額表示への対応義務が発生するのは4月1日発売の書籍から。3月31日までに発売された書籍の店頭在庫を返品したり、回収したり、店頭で(総額表示記載)スリップを入れたりすることは求められていない』との見解を示した」と報じているように、出版社の業界団体である日本書籍出版協会は、現時点での市場在庫には影響は無いという旨のアナウンスをしている。

 だが、同じく9月18日に文化通信社が報じた「来年4月の総額表示義務化 財務省『出版物はスリップなど何らかの形で税込価格を、対象は市中在庫にも及ぶ』」という記事では、市中在庫も義務化対象であるということになっており、矛盾が生じている。

 現状ではいまだ情報が錯綜しており、今後また事態が推移していくものと思われる。9月23日には小規模出版社を中心に構成される一般社団法人日本出版者協議会より、「消費税総額表示義務の特例の『無期限延長』、『外税表示』許容の恒久化を強く要望する」という声明も出されたところだ。