2016年に建物の建て替えのため一時休業していた渋谷パルコが、11月22日にリニューアルオープンした。73年に開店し、40年以上渋谷の文化状況に影響を与えてきたこの施設の営業再開は多くの人々に喜ばれているが、ある点については落胆の声が上がっている。新生渋谷パルコには、「本屋」が入っていないのだ。
そして、本屋を持たない形で渋谷パルコが復活したことは、現代日本における「中間領域的な本屋」の成立し難さを象徴しているのではないかと、小さな個人書店の経営者である私は考えている。
サブカルをセゾングループ資本が下支えしていた時代
休業前の渋谷パルコPart1では、86年にロゴス渋谷店(洋書専門店)が、93年にはP-BC渋谷店(2004年にリブロ渋谷店に店名変更)がオープンしており、途中12年には両店が統合されパルコブックセンター渋谷店としてリ・オープンする経緯を挟みながら、本屋テナントとして長年営業していた。
90年代のP-BC渋谷店には、天久聖一・タナカカツキ『バカドリル』や、それに類する所謂サブカル本が飛ぶように売れていた、というエピソードがある。『バカドリル』自体がそもそも、パルコが発行していたフリーペーパー『GOMES』に連載されていたギャグページであり、若い世代によるサブカルチャーの制作・販売・消費を、パルコ=西武・セゾングループ資本が下支えする光景がそこにはあったと言えるだろう。
2000年にパルコブックセンターは同じセゾングループ内のリブロと経営を統合し、2003年には日本出版販売株式会社がリブロの株式をパルコから90%買収、パルコブックセンター/リブロはセゾングループから離脱することになる。
ただ、2000~2010年代にリブロ渋谷店/パルコブックセンター渋谷店を訪れていた世代の人間である自分は、アートやサブカルチャーの窓口の機能を果たしつつ、一般書や実用書などもきちんと在庫している店、という印象を同店に持っていた。資本形態が変わっても、90年代以降店舗としての極端な変節は無かったのではないかと思う。
「中間領域的な本屋」が持っていたメリット
私が考える「中間領域的な本屋」とは、端的に言うと、「売れ筋一辺倒の在庫志向ではもちろんないが、かと言って過度に選民的だったり排他的な選書傾向・雰囲気ではない店内を、ある程度の空間的余裕のなかで他人の目を気にせず回遊できる店」というイメージになる。