10月29日の発売とともに、業界内外を騒がしている異色のコラボ増刊「ビームス×週刊文春」。そのなかから、ハーバード大出身で東京在住のファッション・ライター、デーヴィッド・マークスさんによる「日本人のためのビームス論」をご紹介。
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ビームスの店舗と商品は、海外のガイドブックにも紹介され、世界のファッション・ピープルはもちろん、観光客のハートもがっちり掴んでいる。アメリカンスタイルのファッションに日本が与えた影響について研究した名著『アメトラ』で話題となったデーヴィッド・マークスさんが、外国人から見たビームスの魅力を綴る。
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「ビームスって、日本で有名なの?」
2年前、センスは良いけれどファッションには興味がない私の母からメールが届いた。カナダのバンクーバーを旅行中、ホテルのロビーで「ビームス」というブランドのポップアップショップを偶然見つけたと言うのだ。
「日本の職人が作った可愛い品物がいっぱいあるのよ。ビームスって、日本で有名なの?」
はい、お母さん。ビームスは物凄く有名ですよ。市場をずっとリードし続けていて、日本列島北から南まで店舗があって、現代の日本のカルチャーでもっともリスペクトされている組織の1つなんですよ。
私の著作『アメトラ:日本がアメリカンスタイルを救った物語』の中でも「ビームスは日本の洋服史にとても重要な役割を果たした」ということを書いたし、ビームスの大型豪華本『BEAMS beyond TOKYO』が出版される際には英文パートの執筆を手伝ったのに、母はカナダで初めてビームスを知ったわけだ。
母が私の執筆活動にあまり注目していないという問題はさておき、母のメールでわかったように、『BEAMS beyond TOKYO』という書名どおりビームスは今「東京を超えて」海外にもどんどん拡張をし始めている。
創業から43年間、世界中の一番良い商品を輸入し日本人に紹介してきたビームスは、現在、日本の一番良い物を海外の人に紹介している。この逆転現象は一企業だけの話ではない。ビームスが国際的舞台に立ったのは、日本の文化的影響が世界中に浸透してきた象徴と言える。その上で、改めてビームスのことを理解してみると、日本人が「日本」をどのように認識しているのかがわかってくるはずだ。