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「なぜ日本人はそんなにオシャレなの?」ハーバード大出身ライターが徹底研究する『ビームス文化』

「なぜ日本人はそんなにオシャレなの?」ハーバード大出身ライターが徹底研究する『ビームス文化』

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ビームスが西洋でブレークしたきっかけ

 日本のアパレル市場が世界的に見ても敏感でオシャレになったことは、ビームスのビジネスチャンスにつながった。世界をファッションで先導する機会が訪れたのだ。しかし、「セレクトショップ」は輸出しにくい。そして来日した人は知っていても、ビームスの店舗は西洋ではまだ殆ど認知されてはいなかった。そのため、ビームスの世界進出は香港、台北、北京、バンコクと、アジアから始まった。

 そんなビームスが西洋でブレークしたきっかけは、店舗ではなく、オリジナルブランドだった。高品質のアメリカントラディショナルを作っている「ビームス プラス」が西洋で話題になったのだ。欧米にも似たようなブランドはあったが、アメリカ製の物よりビームス プラスの方が“本格的”だったことで、西洋人たちに衝撃を与えた。ビームス プラスの服は理想的な「アメトラ」だった。ビームス プラスが提示したアメトラの「お手本」を経由して、西洋の男子たちは自分のルーツを発見したわけだ。

デーヴィッド・マークスさん。アメリカンスタイルのファッションに日本が与えた影響について研究した名著『アメトラ』で話題となった

 アメリカの南部で育った私も、30歳の時、服を大人っぽくしようとビームス プラスの常連客になり、以来10年もの間、紺ブレから短パンまでビームス プラスの服をクローゼットに詰め込んできた。取材を受けるときにもビームス プラスの服を着用することが多いが、「どこで買ったの?」とよく訊かれる。

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「Highsnobiety」という人気ファッションウェブ雑誌の編集ディレクター、ジアン・デレオンはビームスとの出会いをこう語った。

「ビームスの存在を知ったきっかけはMr PorterというEコマースサイト。そこでビームス プラスの最高のカーゴパンツを買ったんだ。高品質なのに、お手頃価格なのも嬉しかったね」

 デレオンはビームス プラスを雑誌の撮影で頻繁に利用し、スタッフたちも愛用するようになった。

「派手なコーデュロイのシャツを使った時、20歳の編集者がそれを買い取ったんだ。ビームス プラスはGAPやJクルーを“卒業”した男たちにぴったりだし、知る人ぞ知るといったブランドで、誰もがそれを持てるわけではないから着ると特別な気分になるよ」

 ビームス プラスが人気になったタイミングで、ビームスの40周年を記念して、これまでに他企業と組んで作ったコラボ商品を紹介する英語の本『BEAMS beyond TOKYO』が出版された。「コラボ」は今や様々な業種で行われて定番化しているが、この本を見ると、西洋が寝ている間にビームスは何百もの有名ブランドとのコラボを果たしていることがわかる。リーバイス、ナイキ、L.L.ビーン、そしてエンジニアド ガーメンツやループウィラー、ポーターのような優秀な日本のブランドとも。

 海外の人に取材すると、しばしば話題に出るのが、ビームスがブルックリンのセレクトショップ「ピルグリム サーフ+サプライ」と組み、日本国内で初の直営店を出店したという件だ。先に登場したデレオンはこう語る。