抗議運動に参加すれば逮捕、自殺者が出るほど問題は深刻化
――内モンゴルでも抗議活動が起こっているそうですね。
ただ、抗議運動に参加した人たちがどんどん逮捕されてしまっています。人権団体の調査や、欧米の報道によれば、4000人から5000人、あるいは、1700人が逮捕されたといわれています。
先ほど入ってきた情報によれば、地域によって、モンゴル人教師の会議も、父母のミーティングも、すべて中国語で行うように義務づけられたそうです。抵抗した教師や父母は「集中訓練」と称し、思想改造の施設に収容されはじめた。
すでに自殺者が出るほど問題は深刻化しています。確認できるだけで、自殺者は6人。4人の教師と1人の校長先生が、中国政府に抗議して自ら死を選んだ。
もう1人は中学生です。学校前で抗議運動をしていた父母が、警察官から暴行を受けた。それを見た中学生が校舎から飛び降りるという、とても痛ましい事件が起きてしまった。なかには、9人が自死したという情報もあります。
遊牧を営む家庭の子どもの多くは寮生活を送りながら、学校に通っています。親にとっては、子どもたちが人質に取られたような状況なのです。なかには、授業をボイコットさせる親もいるのですが、警察が強引に子どもを学校に連れて行ってしまう。
――そうした「中国語教育の強化」は、突然はじまったのですか?
モンゴル語教育が禁止されるというウワサが流れはじめたのは、今年の6月ごろです。内モンゴルに暮らす人たちは、人がいいから「正式な公文書が出ていないから、大丈夫ですよ」「騒ぎすぎです」と楽観視していました。でも、リークされた内部文書などを調べてみると、どうやら本当にやるらしい。
これはマズいと感じた私は、7月22日からモンゴル語教育維持を訴える署名サイトを開設しました。8月10日までの20日間に集まった3643人の署名簿と抗議文書を中国政府の国家教育部、内モンゴル自治区教育庁、アメリカ大使館などに送り、モンゴル国のメディアなどに報道してもらったのです。この時点で、私も全世界から署名が集まれば、中国政府も方針を転換するのではないか、と考えていたのですが……。見通しが甘かった。
そして、8月25日。父母たちが子どもを学校に連れて行ったら、中国語で書かれた新しい教科書を見せられた。こうして抗議活動がはじまったのです。