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「暴行の末、石炭や薪の上で火をつけられた」 中国共産党による第二の“文化大革命”を止めるため日本人に知ってほしいこと

モンゴル民族から文字と文化が奪われようとしている#2

2020/10/09
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中国政府は、3つの読み間違え

 私は、中国政府は、3つの読み間違えをしていると見ています。

 1つ目は、モンゴル国の存在です。ウイグル人も、チベット人も独立国がありませんが、モンゴル人は違います。

 中国は、モンゴル国を格下に見て、内モンゴルを漢化し、支配していく上で、たいした障害にならないと考えたのでしょう。確かにモンゴルの名目GDPは130億ドルで、中国の100分の1以下。人口は約320万人なので、中国の430分の1以下に過ぎません。しかしモンゴル国が声をあげたら、国際社会も無視できない。

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 モンゴル国には、地政学的な危機感もある。モンゴル国にとって、内モンゴルは、中国との緩衝地帯(2国間の衝突を和らげる中立地域)の役割を果たしている。直接、中国と対峙したくはないモンゴル国は、内モンゴル自治区を本気で守ろうとするはずです。

内モンゴル自治区の風景 2016年撮影 ©️Toru Yamakawa

 2つ目の読み間違えがモンゴル人の気質です。

 内モンゴルの抗議活動で「殺すなら、殺せ!」と叫ぶモンゴル人男性がいました。実は、中国の少数民族のなかでも、モンゴル人は武を貴ぶ気質が強いんです。チンギスハーンの子孫であり、かつて祖先がユーラシアを席巻したという誇りがある。文革に代表されるように、内モンゴル自治区は幾度も弾圧にさらされてきた。これ以上、ムダな犠牲者を出したくないという空気を生みましたが、誇りを傷つけられたら、立ち上がる気持ちを忘れたわけではない。中国政府はここまで大規模に、そして世界的な抗議活動に発展するとは思っていなかったと思いますよ。

©️Toru Yamakawa

 3つ目が国際社会の変化です。

 中国政府の強権的な手法は文革の時代と変わりません。けれど、五十数年前とは違って、人権意識も高まり、情報が瞬時に世界中に拡散し、国際世論を喚起できる。世界中で、情報を知るすべがある。

 それなのに、いまだに中国政府は、日本の反動的な大学教授が反中国勢力を先導していると盛んに言っています。誰のことか知らないけどね(苦笑)。