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 ほとんどの場合、男が売春の客である以上、分からない、あるいは分かろうとしない淵が売春する女性たちとの間には存在する。その淵を客の目から隠しているのが歓楽街、歌舞伎町である。

 ヤクザ、暴力団組員の多くは女のヒモとしてヤクザ生活を始める。どのような大親分であっても、女に養われた一時期を持つと、現役の組幹部から聞いたことがある。ヒモはヤクザ道の基本なのだ。ヤクザが服役すれば、シャバに残された自分自身と子供を養うのは妻か愛人かであり、彼女たちが収入を得る場所が飲食店か風俗店しかないことは見やすい事実である。

ヒマこそ命

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 またヤクザの生活でもっとも特徴的なのはヒマである。山口組の若頭だった山本健一の夫人山本秀子は結婚前、神戸・三宮でスナックを開いていたが、彼女から、健一と知り合った当時の話を聞いている。彼女はこう思い出を語った。

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「最初は(山本健一は私を)プリンスの(後尾に)羽のはえたような車でお出迎えですよ。『あなた、何をしてる人?』と聞いたら、『わしは組のもんや』。私の父も組なんです。ただ、意味が違う。土木建築の組で、私はこの人も父と(商売が)一緒なんやろと思うてた。

 けどね、一緒になってから見てると、ヒマが多いんですよね。朝といわず、昼といわず、夜といわず、ともかくヒマがあるんよ。おかしいなあ、と。社長になったら、こういうもんかいな、いうぐらいの感覚でしたね。そら、女も30なかばになってね、海千山千越えるようになったら別ですけど、当時は私も19ですから。でもヤクザと知ってからは、生き地獄覚悟でいったんです」

 ヤクザは「無職渡世」といわれるぐらいで、生産行動は何もしない。そのため自由になる時間、ヒマな時間がありあまるほどある。よってヤクザはヒマな時間の一部を女性のケアに当てることができる。女性に対してマメになれる。また経済的に女性を頼らざるを得ないから、自分はあなたを必要としていると真顔でいうことができる。「必要とする」と「愛している」を、女性が錯覚することは割に多いはずである。