日本一の歓楽街、新宿・歌舞伎町。コロナ禍でも、感染源である”夜の街”として名指しされるなど、目の敵にされることが多かった。欲望・エロス・犯罪の都は、いかに生まれ、どこに向かうのか。暴力団や組織犯罪を長年取材してきた溝口敦氏の著書、『ヤバさの真相』(文春新書)より、一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目、#1より続く)
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あからさまな求人広告
2002年ごろから歌舞伎町のアジアン・エステではホンバン(性交)が当たり前の行為になり、ポン引きの外国人女性が「1万円で最後までOKよ。かわいい子一杯いるよ」と道行く男たちに堂々と声を掛けるようになった。
2003年、歌舞伎町を中心に配布されている中国語紙には、次のようなエステ店の求人広告が出た(原文の中国語を和訳)。たいがいの日本人はこれを見て、その違法を承知の図々しさに驚こう。中国人の仲間内では日本の法律や取締りは問題にもされず、意識にも上らなかったかのようにみえる。また日本人は中国女性に約束される高額報酬を知って、ウソだろうと思うだろう。
〈エステ『K』新宿歌舞伎町超一流チェーン(六店)大型店 連合 急募 女性
月150万円の収入は軽い まじめにやれば250万円も可能 300万円以上の月収も難しくない
○店に住み込み可 ○収入は店と女性との間で五分五分の配分、日払い、税金の徴収なし
○年齢三十歳まで ○ホンバンをやる ○ビザ不要、不法滞在者大歓迎〉
連絡先として店長と店のママの携帯電話番号が記されている。ちょっと容姿に自信があり、体を売ってでもカネを掴もうという考えの中国女性なら、月収150万円、250万円を目の前に突きつけられて、ムラッとやる気を起こすかもしれない。
歌舞伎町が長い中国人男性Qが解説する。
「エステでホンバンは2万円。私が知ってる子は1日最高25人の男を相手にした。これで1日の売上は50万円。女性の取り分は半分の25万円です。1日10人を相手にして月に20日働いたとしても、月収200万円になる。ちょっと体を酷使すれば、300万円以上になるというのはホントなんです」