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「中国人が消えることはない」 歌舞伎町と中国マフィアの切れない関係

『歌舞伎町・ヤバさの真相』より #2

2020/10/12

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, ライフスタイル, 歴史

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エステ王、荒稼ぎの構図

 不景気と経済危機に見舞われている日本人としては、なんとも複雑な気分になる。違法の商売とはいえ、とんでもない額を日本の男たちは支払い、中国人に稼がせている。店で働く女性がこうも高額なら、エステ店の中国人経営者はさらに目玉の飛び出る額を稼いでいるはずである。

「Kチェーンを経営しているのは南京出身、37歳の中国人Kです。この男は最近逮捕されたから言うけど、97年ごろ歌舞伎町で外国人相手にガイドを始めた。それが6年たった今、エステを6店も経営している。1軒の店に女の子が5人いれば、月の売上が1000万円はいく。6店で月6000万円。年間約7億円。儲けの凄さが分かるでしょう。

 それに中国エステの内装は中国人の内装屋がやる。内装屋は工事に使う木材やセメントなど材料にカネを使わず、日本人の業者が道に出している材料をトラックで盗んでくる。だから工事費が安く、想像するより安いカネで店をオープンできるんです」(前出のQ)

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 エステの経営者Kのケツ持ち(用心棒)は極東会系の組と自称マカオや上海のマフィア、あるいは中国東北幇(中国東北部=旧満州=遼寧、吉林、黒竜江三省の出身者から成る中国マフィア、または日本に帰った中国残留孤児の二世)だった。

「東北三省には傾いた国営工場が多く、中国の中でも貧しい地域です。それに旧満州時代の遺産で身近に日本語を話す人が多く、高校で日本語も教えている。だから彼らにとって日本は取っつきやすく稼ぎやすく、争って日本に来ることになる。一時期、歌舞伎町に多かった上海、福建、北京の出身者は最近地元に帰って少なくなり、東北三省の出が多いんです」(Q)

©iStock.com

 かつてこのKにひどい目に遭わされたという南京出身のエステ店経営の女性が語る。

「Kは3年前、私のところに上海出身の男を連れてきて、『この男が3万円出すからエステ商売の勉強をしたいと言っている。希望を叶えてやってくれ』と言い出した。私は引き受け、2時間ほど教えてやった。男は『自分でもエステ店をやりたい。手伝ってくれないか』というので、私はいいよ、と引き受け、それでこの男とつき合いが始まったんです。

 そのうちKがまた私のところに来て、店に雑用役兼用心棒を紹介する。月40万円やってくれないかというので、上海出身、40歳くらいの男を雇いました。この男は来日3ヵ月で、まだ日本語をしゃべれない。おまけに働かないし、雇って1ヵ月後、私のカバンから売上金を盗んだ。当然、首にしました。

 そうしたらKがやって来て、『俺が紹介した人間をなぜ首にした。俺のメンツがない』って、私を脅しに掛かった。私には娘がいるんですけど、『1000万円出さなければ娘を誘拐する。2日間、時間をやる。カネを出すか、娘をさらわれるか、どっちが得か、よく考えろ』と言いました」

 来日した中国人は旧知の関係でも教示料や紹介料など、依頼事にカネを介在させる。Kとのもめ事にもそうした習慣がかいま見える。