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「中国人が消えることはない」 歌舞伎町と中国マフィアの切れない関係

『歌舞伎町・ヤバさの真相』より #2

2020/10/12

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, ライフスタイル, 歴史

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背水の陣の警視庁

 組員2人を中国人に殺傷された住吉会系幸平一家は02年10月、村上こと金石を追う過程で、中国側の運転手役をつとめた日本名熊谷俊男こと張立濤(26)に暴行し、胸や腹など14ヵ所を刺して殺し、死体を新宿区上落合に遺棄した。

 この報復行為で幸平一家は03年4月、組員五人が警視庁の指名手配を受け、数人が逮捕された。日本のヤクザは警察の徹底摘発も覚悟の上、中国マフィアに総力戦を挑む時代を迎えた。もはや日中マフィアの歌舞伎町での棲み分けは不可能になったのか。

 前出のQは中国人の姿が歌舞伎町から消えることはないと、棲み分け不可能説を否定した。

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「中国人は不法滞在で警察や入管に挙げられれば、強制送還される弱みを持っていたわけですが、最近はビザの取得も簡単です。女なら日本の男と偽装結婚する。男が本気で結婚する場合もあるけど、中国女性はわざと夫と喧嘩し、家を出てしまう。月に一回ぐらいはサービスで夫にセックスを許し、カネを稼げる自由を得るわけです。

 男の場合は知り合いの日本の会社に自分を招かせ、そこに雇用された形を取る。会社から名目上もらったことにする給料にかかる所得税などは自分で支払う。給料をもらうどころか、逆に日本の会社に月7万円ぐらいをお礼で払う。それでも歌舞伎町で稼げる額と比べれば、ごくごく安い必要経費と考えてます」(Q)

©iStock.com

「パリジェンヌ事件」は暴力団ばかりか、警視庁にも衝撃を与えた。歌舞伎町の裏社会を仕切っているはずの暴力団が逆に中国人マフィアに襲われ、死傷者を出した。このまま放置しては歌舞伎町は中国人マフィアに征圧されてしまう……と考えたのだろう。

 03年、警視庁は組織体制を改めて歌舞伎町に臨んだ。すなわち刑事部内の捜査第四課、暴力団対策課、国際捜査課と、生活安全部内の銃器薬物対策課をそれぞれ廃止した。代わりに組織犯罪対策部(組対)を新設し、組織犯罪対策総務課、組織犯罪対策第1課~第5課を創設し、同年4月1日から実施に移した。歌舞伎町のハイジアビルには前から国際捜査課が置かれていたが、同じビルに組対を持ってきた。

 しかもハイジアビルの8階には東京入国管理局の新宿出張所が新設され、同じく4月1日から稼働を始めたことは前に記した。当初、入管新宿出張所は所長以下41人の陣容で発足し、05年には所長以下、統括入国警備官2名、入国警備官60名、入国審査官9名、総勢72名の体制になった。

 新宿出張所は、開設してわずか22日後、品川の東京入管本部からも入国警備官70人の応援を得、また機動隊を中心に千人もの警察官を動員して歌舞伎町を包囲した上、不法滞在外国人の一斉摘発に踏み切った。

「中国人が消えることはない」 歌舞伎町と中国マフィアの切れない関係

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