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 つまりヒマこそヒモになるための必須条件である。子分を持たず、ろくにシノギもないヤクザにはヒマがある。ヒマがあり、食う必要もあってヤクザは女と関係を結ぶ。だから女のヒモにはヤクザが多い、という三段論法がおそらく成立する。

 事実、警察庁は暴力団組員がどのように収入を得ているか「獲得手段別」に収入を推計したことがある。その中には歴として「女依存型」という類型がある。つまりヒモである。女依存型は全組員の28.2%を占め、彼らの平均年収は1000万円と、警察庁は推計している(全類型は下から上に下層労働者型=20.5%、親依存型=8.8%、女依存型=28.2%、組依存型=22.4%、組定着型=14.6%)。

売春を支える陰の主役

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 前記の兼松左知子もヒモについて記している。その要点を摘記してみよう。

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〈売春の裏には、女を搾取しようとするヒモが、必ずといってよいほど登場する。ヒモがつくことで、女性の商品化は決定的となる。それは、女性が主体性を失い、ついには、完属物になることを意味するが、ことばをかえれば、ヒモは、女性をそのように仕立てることを理想としているのである〉

〈ヒモには、消極的に売春を黙認するものと積極的に助長するものとあるが、ヒモ自身に共通する特徴は、(1)働く意欲がなく、意志薄弱で、就労しても長つづきしない、(2)売春婦に対し暴力をふるう、(3)自らの成長期に問題を抱えた家庭に育ち、情緒的に不安定で、性格に片寄りのみられるものが多い、という点だ〉

〈公娼制度のもとでは、ヒモの存在は、陰にかくれていたが、赤線が廃止されるとヒモが表面に浮上し、売春を支えるのではないかと、かねてから関係者は危惧していた〉

〈ある調査によると、ヒモを恋人と思っている売春婦は40%、売春婦を恋人と思っているヒモは25%で、売春婦の方がヒモに対して情緒的結びつきが強く、ヒモは女性の孤独感をまぎらわす役割をもっている。だから女性たちはヒモの犠牲者でありながら、自らヒモに尽くすのである〉