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男のエゴがてんこ盛り、振り回される女たち……

 鈴木保奈美演じる貴子、唐沢寿明演じる健吾、江口洋介演じる時男といった大学時代のボート部の仲間7人を描いた群像劇『愛という名のもとに』。大学卒業後に疎遠になっていたものの、3年後、恩師の葬式をきっかけに再会。再会時には、みなが充実した毎日を送っているように振舞っていたが、実はそれぞれ仕事、恋愛、夢などに対して悩み苦しんでいることが明らかになっていく――という物語だ。

江口洋介 ©️文藝春秋

 さて、このコラムでは劇中で繰り広げられた恋愛模様にフィーチャーしていきたいのだが、貴子を筆頭にした主要女性キャラ3人が、ことごとく男のエゴに振り回され、不幸になっていくのである。そして、その様子を強引に美化している(ように筆者には見えた)のだ。

 まずは尚美(中島宏海)。ファッションモデルとして華々しい業界に身を置いているが、その裏で不倫愛に苦しんでおり、1話で自殺未遂を起こす。産婦人科医の中年男・橋爪(森本レオ)は妻に別れを切り出せずにおり、それが自殺未遂の引き金になり、物語後半で尚美はついに橋爪との別れを決意する。

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©️iStock.com

 しかし最終話、独身の新恋人ができていた尚美の前に橋爪が登場。ここで一番問題なのが、橋爪は離婚するつもりがないまま会いに来たということ。妻と別れる気がないのに、尚美に執着し、尚美の心を揺さぶるのだ。

 この男、控えめに言って、とんでもないゲス野郎である。にもかかわらず、そんな不倫男のエゴを受け入れて、尚美は橋爪との不倫愛を貫き通すという決断を下す。

 二人が心を通わせ合って復縁するシーンでは、尚美が「あなたが死ぬときは、奥さんに看取られると思うけど、最期に想うのは私であってほしい」と橋爪に伝えるのだ。尚美の言葉は彼女の本心ではあるだろうが、不倫愛で圧死しそうになっている自らの心をギリギリのところで救済するための、妥協に妥協を重ねた着地点であることは明白……。

 自分の家庭を壊すつもりのない不倫男と、そんなゲス野郎の理不尽に屈して健気なセリフを吐くしかなかった弱き女の恋愛を、ラブ・バラード調のBGMで盛り上げるという演出。あまりに美談に仕立て上げすぎではないかという違和感がとてつもない。

©️iStock.com

 続いての則子(洞口依子)は、ボート部の仲間内ながら以前からほのかに恋心を抱いていた純(石橋保)とベッドイン。そのときの行為で則子は純の子を身ごもるのである。

 結論から言うと、最終話で純は則子と結婚して父親になることを誓い、二人は結ばれて終わる。だが、則子から妊娠の事実を聞かされたときの純は、「好きにすれば」と冷たく突き放す始末。その後、純も結婚に同意するが、則子の両親に婚前交渉での妊娠を非難され嫌気が差し、則子はシングルマザーになる決意も固めるぐらい追い込まれていた。

 則子に対する純は 、“そりゃねぇだろ”と思わせる言動のオンパレード。このように優柔不断で不誠実な純の無慈悲さにさんざん心を痛めつけられた則子を見ていると、最後に結ばれたからと言って手放しで喜べるハッピーエンドには見えず、カタルシスもほぼ感じられなかった。