天空橋を渡ると…
そう思って、再び天空橋駅に戻る。そもそも、天空橋の由来はなんだろうかなどと考えていると、京急の天空橋駅からぞろぞろと人が出てきた。空港の関係者かな? と思ったが、服装などを見ているとそういう雰囲気でもない。むしろ学生服の若者までいるから、学校帰りなのだろう。そして彼らは空港方面には背を向けて、駅の裏手にある小さな橋を渡っていく。その橋の袂に、「天空橋」と刻まれている。天空橋駅の由来は、海老取川を渡るこの橋だった。
筆者も彼らについていくようにして天空橋を渡る。すると、駅の周辺、羽田空港の外れの殺風景な町とは別次元のようなごく普通の住宅地が広がっていた。小さな路地を歩けば一戸建て住宅が延々と続き、いかにも歴史がありそうな商店もある。大通り沿いにはホテルや物流施設もあり羽田空港近しを予感させるが、全体的にはどこにでもあるようなごく普通の下町。その中に、空港に追い出されてしまった穴守稲荷神社もあった。
つまり、海老取川をまたぐ天空橋は、どこにでもある歴史豊かな“下町”と大空へとはばたく空港の町をつなぐ橋。そういう意味で、天空橋という名はまさしくふさわしい。なぜ駅の裏の小さな橋が天空橋と名付けられたのかはよくわからないが、確かにこの橋は天空橋である。地下のホームの天空橋駅に降りて殺風景な“空港側”をうろついてから“下町”、地上側に戻ってきたからあまり“天空への橋”という趣は感じなかったが、紛れもなく地上と天空を隔てる橋が、天空橋駅の裏側にかかっていた。
「HANEDA INNOVATION CITY」
しかし、やはり天空橋駅周辺の殺風景は寂しすぎる。どうにかならないものか、と改めて駅に戻ってみると、駅の裏手にHANEDA INNOVATION CITYという今年の夏に一部がオープンした複合施設が建っていた。
天空橋駅とも直結しており、今でこそまだたいしてテナントも入っていないようで人もまばらだったが、2022年のグランドオープンまでにはたくさんの商業施設はもちろんライブハウスのZeppもできるとか。そうなれば、きっと空港ターミナルとの近さも相まって賑わう街になるのだろう。殺風景で寂しい天空橋駅もあとわずか、ということか。そうなる予感は、モノレール・京急の天空橋駅ホームの駅名標に小さく書かれた「HANEDA INNOVATION CITY」という副駅名に詰まっている。