文春オンライン

羽田空港までの“ナゾの途中駅”「天空橋」には何がある?

2020/10/12
note

「天空橋」には何がある?

 浜松町からモノレールに乗って約15分。天空橋駅にやってきた。あいにくの曇り空だったから天空感はあまり味わえないかと思いつつ、モノレールが停まったのでホームに降りる。頭上を見上げれば、まさに広々とした大空が……なんてことはないのである。

 天空橋駅はその名に“偽り”しかない地下駅だ。モノレールだけでなく京急も同じく地下駅で、天空どころかトンネルの天井が上から迫りくる闇の中。うーむ、「天空橋」感は全くない……。

実は「地下駅」の天空橋(筆者撮影)

 いくらホームに立っていても空が見えることはないので、諦めて階段を登って外に出る。きっと、外に出れば天空ムードが漂いまくっているに違いない。すると……確かに、空が広々と頭上に広がっていて、駅舎を背にして右手前方の遠くには飛行機が何機も駐機中。あたりに背の高い建物がないからますます空が広く感じられ、羽田空港のほど近くに来ていることが実感できる。駅の外に出れば、そこは確かに天空への入り口に近い一帯だった。

ADVERTISEMENT

駅舎付近からも飛行機が見えた。空港までの距離が近い(筆者撮影)
高い建物も少なく空がより広く感じられた(筆者撮影)

川べりにある大きな鳥居の正体は…

 ここで今更ながら地図を見る。すると、東京湾にちょろっとはみ出して広がっている羽田空港のある“島”の一番左端に天空橋駅があることがわかる。

 モノレールの駅舎のすぐとなりには京急の駅入り口が建ち、その前を少し歩いていくと多摩川にぶつかる。多摩川は東京と神奈川の都県境だから、川の向こうに見える町並みはもう神奈川県川崎市。

 そしてその川べりに、大きな鳥居がそびえている。額には「平和」。身も蓋もないが、平和への祈りは古今東西共通だから何の文句もない。鳥居があるのだから社もどこかに、と思って見渡したが、残念ながらそれは見当たらなかった。いったいこの鳥居は何なのか。

川べりの鳥居の正体は…(筆者撮影)

 この鳥居は、かつてこの一帯にあった小さな町の守り神・穴守稲荷神社のものだ。羽田空港はすべてが空港のための埋立地として建設されたわけではなく、明治時代には今の第3ターミナル付近まで陸地になっていた。遠く奥多摩から多摩川の流れに乗って運ばれてきた土砂が堆積して生まれたいわば天然の埋立地だったのだ。本土側とは今も羽田空港との間に流れる海老取川で隔てられていた。