さらに、企業社会になぞらえて、次のように解説した。
「移籍がほぼ決まった段階になって、織田が組織継続を決めたため、6代目側は怒った。それは当然でしょう。『話が違うではないか』ということになる。これはどこの社会でも同じこと。ビジネスマンの社会でも所属先の会社を変えて転職ということになり、移籍することでほぼ話が固まって後は円満に手続きを進めるだけという段階になって全てひっくり返されたらどうなるか。訴訟になるのではないか」(同前)
絆会は、神戸山口組最高幹部だった織田らが中心となって同組を離脱して結成した組織だ。2017年4月に当初は任侠団体山口組の名称で旗揚げし、その後に任侠山口組と名称を変更。さらに今年2月に絆会と名を変えている。
金澤は織田の最側近とされる絆会の最高幹部だった。前出の指定暴力団幹部が解説する。
「竹内組組長という立場を、自分の後継を託した宮下が6代目山口組に移ると聞いて当初は説得しただろう。ところが、すでに移籍を決めていることが分かり、承服できずに撃ってしまったのではないか」
6代目側が黙っているわけもなく、事件直後から、長野県松本市内の竹内組の事務所には、6代目山口組組長の司忍、若頭の高山清司らの出身組織、弘道会系の複数の傘下組織などから多くの組員らが当番制で応援に駆けつけ、絆会側からの対抗措置を抑え込んでいるという。
なぜ銃撃事件は長野で起こるのか?
長野県は5年前の山口組分裂後、初めて抗争で殺人事件が起きた土地でもある。当時の事件も今回と同様、移籍トラブルが原因だった。
2015年10月6日、長野県飯田市のホテル駐車場で6代目山口組から神戸山口組に移籍する意向を持っていた組員が撃たれて死亡。6代目山口組系組員が後に殺人容疑で逮捕されている。
警察当局の幹部が解説する。
「山口組や神戸山口組は関西が中心と世間では思われているが、双方ともに全国に傘下組織が拠点を築いている。長野県内には県庁所在地の長野市、人口が多く規模が大きい松本市、その他にも各地域にそれぞれ傘下の組織が存在していて争いが絶えない。竹内組もこれまで6代目山口組系の組織と、かなりやり合ってきた」
昨年末までに警察庁がまとめた最新の勢力データによると、山口組は43都道府県に約4100人、神戸山口組は32都道府県に約1500人、絆会は12都道府県で約300人の構成員が確認されている。今回のような銃撃事件は全国各地いつどこで起きるかは予測不可能だ。